同性婚に慎重な岸田首相が「LGBT法」成立は急ぐ訳 自民党の保守派は反発、政局の新たな火種

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これもあって、7日の自民総務会では「野党は夫婦別姓や同性婚と結びつけようとするが、切り離して慎重に議論すべきだ」などと、複数の議員から理解増進法案の取り扱いや具体的内容にくぎを刺す発言が続出。その中で「体は男でも心は女だからと女子トイレに入り、それをとがめたら『差別だ』では社会が混乱する」などの指摘も飛び出した。

また反対派の有力議員の西田昌司政調会長代理(参院)は「差別の禁止や法的な措置を強化すると、人権侵害など逆の問題が出てくる。社会が分断されないような形で党内議論をすべきだ」と法案推進派を強く牽制した。

党内議論を岸田首相は静観

一方、岸田首相側近の林芳正外相は、7日の記者会見で「日本以外の先進7カ国(G7)各国には性的少数者(LGBT)に対する差別を禁止する法令や同性婚法、パートナーシップ制度がある」と説明。「性的指向や性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならない」と力説した。

さらに「G7議長を務める日本政府として、あらためて国内外に対して丁寧に説明していく努力を続けていかなければならない」とも語った。ただ、日本と各国の違いについては「各国を取り巻く事情が異なることから、一概に比較することは困難だ」とも指摘した。

自民内の保守派は、伝統的価値観を重視する立場から、「いったん法制化を許すと、夫婦別姓や同性婚の容認へと広がってしまう」との危機感をあらわにする。しかも、岸田首相が2月1日の衆院予算委で、同性婚について「きわめて慎重に検討すべき課題」「社会が変わってしまう」と発言し、その真意を説明するために荒井氏が「差別発言」したとみられていることも状況を複雑化している。

法案推進派は「G7で同性婚制度がないのは日本だけ」と主張するが、保守派有力議員は「日本には、婚姻は『両性の合意のみに基づく』と定めた憲法24条の規定があり、憲法上の制約があると説明すれば問題ない」と反論する。

こうした党内の動きを踏まえ、岸田首相も昨年暮れの臨時国会で、自らの主導で成立させた旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の被害者救済法への対応と異なり、当面は党内議論の行方を静観する構えだ。

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