だが、出世して大勢の従業員を管理する立場になると、「パンチ・アップ」できる対象はいなくなる。若手時代と同じ感覚のまま、ユーモアを発揮したつもりが、「パンチ・ダウン」になり、ハラスメント問題を起こしていた、なんてことになったら目も当てられない。
ある程度の地位の人が、さらに上の人に向かって「パンチ・アップ」をしている様子は、若手からすれば「おっかない」と映ることもある。自分から見れば、気後れするような立場の人の発言は、いつの間にか緊張を生み出している場合があるのだ。
これらを考えると、出世すればするほど、他人をからかうよりも、「自虐的なユーモア」を発揮するほうが良いということになる。
ただし、地位の低い人の場合は、自虐的ネタばかり言っていると、自信がないように受け取られ、なめられてしまうので、注意しよう。
出世と忖度とジョークの関係
出世して地位が上がった場合は、周囲の人々の、自分に対する感覚がどのように変化しているかを感じ取る必要もある。
地位が高まり、権力が大きくなるにつれて、自分のユーモアに対して、人々が笑い声をあげている様子を見て、「これは本当に純粋な反応なのか?」を考える必要が出てくる。
人がウケたときの「笑い声」と、「社会的ヒエラルキー」には、密接な関係があるからだ。
フロリダ州立大学の研究グループが、しょうもないギャグを2つのグループに聞かせて、その反応を観察する実験を行った。
1つめのグループは、実験担当者が「上司」という設定でギャグを飛ばす。2つめのグループは「部下」という設定で同じギャグを飛ばす。その結果、「上司」が飛ばしたギャグのほうが、笑い声がたくさん起こったのだ。
組織に所属していれば、ごく自然に上司の顔色をうかがう行動が起きる。意図的に太鼓持ちをするつもりはなくとも、社会的生き物である限り、自分よりも地位の高い人間に対して、ご機嫌をとる反応は、無意識レベルで出てしまうのだ。
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