今年のバレンタインは地味でも意外と悪くない訳 賛成と否定に二分、「本命」「義理」は時代錯誤に

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バレンタインチョコ
義理チョコとはわかっていても、もらったほうはうれしかったり、友チョコによって仲が深まったりすることも(写真:shige hattori /PIXTA)

学校、部活動、アルバイトなどで会う機会の多い10代が「友チョコ」を贈り合うのは自然な行動かもしれません。逆にそれ以外の年齢層は、「バレンタインデーの前後に会う友人がいない限り『友チョコ』は買わない」のではないでしょうか。

穏やかでピュアなイベントに変化

私自身、学生だった1990年代後半に、百貨店の洋菓子店でアルバイトをしていました。バレンタインデーを控えた1月から2月前半の売り場は、チョコレートを買いに来た女性たちで大混雑。当時は、好きな男性に贈る「本命チョコ」と、それ以外の男性に贈る「義理チョコ」の2種類しかなく、それでも大きな紙袋を持った女性たちがフロアを埋め尽くしていました。

しかし令和の今、前述した調査で「本命チョコ」と「義理チョコ」は、断トツ1位の「家族チョコ」、2位の「自分チョコ」、3位の「友チョコ」、4位の「世話チョコ」に続く、5位と6位。21世紀に入ってからの二十数年で、バレンタインデーというイベントが大きく変わったことがわかるのではないでしょうか。

特に令和に入ってからは、ジェンダーに対する世間の意識が変わっているだけに、「女性から男性に贈る」という形式そのものに疑問を持つ人も少なくないでしょう。また、「自分らしく生きること」が尊重される世の中になり、「決められた日にこれをする」という風習への意識が薄くなっているようにも見えます。

それらの意識がなかったころは、バレンタインデー特有の期待感や不安感、ワクワクやドキドキを楽しむ人が多数派を占めていました。しかし現在のバレンタインデーは、「最も身近な家族、日ごろ頑張っている自分、大切な存在の友人、お世話になっている人に、感謝や労いの気持ちを伝える」という穏やかでピュアなイベントに変わった感があります。

私が取材をしているときに、「今年のバレンタインデーは地味だけど、決してネガティブではない」と思ったのは、そんな穏やかでピュアなムードを感じたから。コスパなどの効率を考える人ばかりでなく、本当に贈りたい相手に思いを伝えようとする人々がいる「現在のバレンタインデーもいいな」と感じたのです。

あらためて考えると、クリスマスや年賀状など年末年始の風習が時代とともに変わっていく中、バレンタインデーだけ変わらないのも不自然でしょう。もともと世界には、プレゼントを贈り合ったり、男性から花束を贈ったりする国があるなど、日本のバレンタインデーは独自の風習と言われてきました。だからこそ今後も、どんな影響を受けて変化を遂げていくのか、注目していきたいと思っています。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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