JR西日本、梅田エリア「座って通勤」拡大の切り札 特急列車を増発、「Aシート」は新車両を導入

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同じAシートなら誰もが新しいAシートに乗りたいのではないか。鶴岡課長に誘い水を向けてみたが、さすがに苦笑いするばかりだった。1日6往復のうち、Aシートが223系か225系かは、その日の運用次第で変わるので、225系を選んで乗るというのは難しいという。

利用には乗車券のほかに840円の普通車指定席料金がかかるが、ネット予約を活用すればチケットレス指定席券が区間に応じて450〜600円で購入できる。また、特急のキャンペーン同様、さらにダイヤ改正後は4月28日までチケットレス指定席券が全区間一律390円で購入できる。

特急もAシートも同額の390円。どちらかを選ぶとなれば、多くの人が特急に乗りたいと思うはず。しかし、たまたまAシートに乗った人はその設備の充実ぶりにAシートでも満足することだろう。

着席サービス競争の時代に

JR西日本は阪急や京阪などライバル私鉄との利用客獲得競争の対抗策として新快速に注力し、そのスピードを武器にライバル私鉄に対して優位に立つことができた。これに対して、京阪電鉄が有料座席サービス「プレミアムカー」を導入して好評を博している。南海電鉄の関空特急「ラピート」も朝夕の時間帯は通勤特急として人気を集めている。こうした状況で阪急阪神ホールディングスも中期経営計画で2024年度の有料座席サービス導入を打ち出すなど、利用者獲得競争はスピードだけでなく着席という部分にも展開し始めている。

JR西日本はAシートの今後の投入計画はないとしている。しかし、もしAシートの利用状況が好調なら、JR西日本がほかの路線も含めて有料座席車両の増強に動き出し、さらにライバルの関西私鉄もそれに対抗するといった局面もありそうだ。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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