津軽線、「鉄道存廃議論」の先にある地元の課題 蟹田―三厩間が存続しても住民連携は不可欠

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それでも鷹ノ巣―大館間は10月8日、岩館―深浦間は12月9日、深浦―鯵ヶ沢間は同23日に運行を再開した。しかし、蟹田―三厩間は取り残された。被害13件のうち12件が集中した大平(外ヶ浜町)―津軽二股(今別町)間の小国峠一帯は、線路が道路から離れ、工事用車両の搬入そのものが困難な状態だったという。

JR東日本は9月末、冬季の降雪を考慮すれば年度内の復旧工事着手が困難だと発表した。さらに12月19日、「蟹田―三厩間の復旧に要する期間は4カ月、費用は6億円以上」との見通しを公表し、「鉄道の特性である大量輸送のメリットを発揮することが困難」と位置づけるとともに、地元に協議を呼び掛け、2つの選択肢を示した。

鉄路を存続させる場合は、維持管理費について、県・2町に一定の負担を求める。存続を選ばなかった場合は、JR東日本も参画して、例えば、乗合タクシーや2町の町営バスを一体的に再編、新たな交通体系を構築する――。

地元は存続を要望

1月の協議開始以前から、JR東日本は再三、「赤字だから廃止、という議論をするつもりはない。あくまでも地域交通の望ましい姿を探る場にする」という姿勢を強調してきた。

ただ、JR東日本が蟹田―三厩間に対して「鉄道の特性である大量輸送のメリットを発揮することが困難」という見解を表明したことに、県内では「人口の少ない津軽半島に『大量輸送のメリット』を求めるのか」という反発の声も聞かれる。さらには「そもそも、地方路線の廃止は国鉄分割民営化時の約束違反だ」という批判もある。

青森県の三村申吾知事は12月のJRの協議会設置提案に対し「鉄路の維持が必要との立場で協議に参加し、JRの考え方や津軽線の利用実態などを確認していくとともに地域住民の交通を確保していくという観点から最善の方策を検討する」との立場を示した。

青森駅と津軽線の列車
青森駅に入線する津軽線の列車=2023年1月(筆者撮影)

また、今年1月の筆者の取材に、今別町は「津軽線は通勤・通学、通院や買い物など地域住民の重要な生活交通であり、早期の復旧を求めている。また、北海道新幹線・奥津軽いまべつ駅と津軽線・津軽二股駅が交差し、2次交通の要であることから、観光面などでも津軽半島北部にとっては非常に重要」と回答した。また、外ヶ浜町は「存続を希望という立場で協議に参加し、その場で話し合いをしていきたいと考えている」という。

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