欧州連合(EU)離脱で英国経済には年1000億ポンド(約16兆円)の損失が生じている。企業の投資や人材プールなど、あらゆる局面に影響は及ぶ。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)はEU離脱後3年間の英国経済を分析。見えてきたのは、保守党政権によるEU離脱で損失を被った暗い姿だった。
BEのエコノミスト、アナ・アンドラーデ氏とダン・ハンソン氏は、英国の現在の国内総生産(GDP)はEUを離脱しなかった場合と比べ4%小さいと試算。企業投資が大きく低下したほか、EU出身労働者が減少したことによる労働力不足が広がっている。
両エコノミストは31日公表したリポートで、「EU離脱を支持した2016年の国民投票は、英国の経済的自傷行為だったのだろうか。これまでの証拠からは、そうだったと示唆される」と指摘。「われわれや大半のエコノミストが予想したよりも、英国経済に対するEU離脱の影響が早く表れている可能性にも留意すべきだ」と述べた。
スナク首相は英国にとってEU離脱は「とてつもなく大きな好機」であり、その好機が生かされつつあると主張しているが、今回の分析はその主張を突き崩す。EU離脱で英国は自由に貿易を活性化させ、ロンドン金融街の銀行にとって有利なように金融サービスを改革することが可能になった。
BEのリポートは、EU離脱によって失われたGDPを算出するのは「容易ではなく、正確でもない」と認めている。EU離脱が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)と重なったため、その困難はさらに増したという。