EVトップのテスラも日本では影が薄い。2021年の調査会社調べによると、ガソリン車王国の日本ではわずか5200台しか売れておらず、全体に占める比率は0.55%にとどまる。
逆の見方をすれば、シェアを追わなければその鎖国的な市場はBYDを「挑戦者」として目立たせる装置にもなる。そして自動車市場が成熟した国の中で、EVの盟主であるテスラといい勝負ができそうな市場は世界中探しても日本くらいしかない。
政府系メディアの経済観察網は「日本市場への輸出は、中国のブランドイメージ向上にもつながる。日本市場の力を借りて、製品の品質、信頼性、安全性を高めることで、世界進出の足がかりを得られる」と分析する。
真の狙いはASEAN市場
自動車販売プラットフォームの創業者も現地メディアに対し「日本などの先進国市場に進出し商品力と安全性を証明できれば、ほかの市場に進出する際の抵抗が少なくなるかもしれない。親日的なASEAN市場は、日本市場への参入がプラスに働くだろう」と指摘した。
別のメディアも「アメリカ市場へのアクセスは難しいし、欧州市場で踏ん張るのはもっと難しい。これらと比べると、日本市場は能力を示すための適切な踏み切り板になる」と考察する。
東南アジア市場では、日本車への信頼が非常に高い。特にタイでは日本ブランドのシェアが9割超と圧倒的地位を占める。
BYDは初の海外EV工場をタイに建設中で、2024年の稼働後は東南アジアと欧州への出荷拠点となる。BYDは「テスラとともに日本のEVシフトを牽引した」、あわよくば「日本のEV市場でテスラに勝った」という実績が、東南アジアをはじめとする海外販売に勢いをつける手になると考えているのかもしれない。
BYDは昨年末、1000万円を超える高級ブランド「仰望」のローンチを正式発表しており、ハイエンド進出のためにも、先進国での成果を必要としている。
もう1つ、中国の専門家がBYDが日本市場で善戦しそうな理由として挙げるのが、トヨタ自動車との協力関係だ。
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