文民統制の放棄!なぜ「空母」が生まれたか 護衛艦「いずも」は、護衛能力のない被護衛艦

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そもそも海自に「空母」が必要だったかという議論も本来は起こるべきだった。「ひゅうが」にしても、「いずも」にしてもヘリコプターの最大搭載は大きいが、平時は3機しか搭載しない。であればほかの護衛艦の搭載ヘリを増やせば済んだはずだ。護衛艦の約半分はハンガーに2機のヘリを搭載できるが、予算の都合で1機しか搭載していない。

それであれば、「ひゅうが」や「いずも」ではなく、旗艦機能を付加した護衛艦を建造すればよかっただろう。既存の護衛艦の拡大型ならば調達・運用コストも安く上がる。あるいはDDH建造自体をやめる。つまり護衛艦の定数を減らしてヘリコプターを増やすという選択もあったはずだ。ヘリコプターの稼働率は固定翼機ほど高くない。

稼働率が落ちている背景には設備費の問題も

出港のためタグボートに引き出される「いずも」

しかも近年は整備費の不足もあって稼働率が落ちている。また有事には撃墜されることもあるだろう。であれば多めにヘリを保有しておくことが必要だ。「ひゅうが」級2隻を建造運用するカネがあれば、多くのヘリを調達し、またそれらの維持費を捻出できるだろう。

だがDDH4隻の開発、調達維持費用で多額の予算が食われてヘリの予算を増やすことはできないだろう。「ひゅうが」や「いずも」に目いっぱいの対潜ヘリを搭載する日はまず来ないだろう。

よしんばDDHを4隻調達するにしても1艦種にすべきだった。2隻、2隻では戦力の定量化が難しい。たとえば現状「ひゅうが」級、あるいは「いずも」級のどちらかがドック入りしているとすると、どちらがドック入りしているのかよって、立てる作戦が変わってくる。同型艦4隻であればそのようなことが起こらない。また開発費や維持費も安く抑えられた。

確かにヘリ空母のほうが、ハンガーが広く整備も楽だし、ヘリ運用余力が生まれるが、多額の開発・建造費までかけてそれが本当に必要だろうか。「いずも」の導入は5階分までしかテナントがいないのに、20階のマンションを建てるようなものであり、予算の効率が非常に悪い。だが、このような議論は国会やマスメディアではまったく起こらなかった。

揚陸作戦や災害救助などでヘリ空母が必要であれば、別途揚陸艦を兼ねた多目的ヘリ空母にすればよかっただろう。そうすれば実質的に護衛艦の数を減らす必要もなかった。実際、諸外国ではそのようにしているし、海自の輸送艦は数が少なく、揚陸能力が低い。であれば仮に揚陸艦が3隻必要であれば、「いずも」級の建造をやめて同じ型の多目的ヘリ空母を4、5隻建造するほうが合理的だ。その方が建造や運用コストが安い。実際、海自は来年度の予算で新型揚陸艦の調査費用を組んでいる。

多目的空母、揚陸艦の類であれば燃料を大幅に節約できる。まず30ノットという高速は必要ない(最近駆逐艦でも27ノット前後の船が増えている)。せいぜい20~25ノットで充分である。であればエンジン出力はより小さくて構わない。またエンジンはガスタービンではなく、より低速で燃費のよいディーゼルエンジン、あるいはディーゼルとモーターを組み合わせた統合電気推進でよい。

そうすれば年間の燃料消費は数分の一に抑えることが可能で、かなり燃費を節約できる。あまり知られていないが、3自衛隊でもっとも燃料代を使用しているのが海自なのだが、燃費の向上にはあまり熱心ではない。

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