防衛力増強には結局「消費税増税」しか道はない 国民が求める「歳出削減」は焼け石に水

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ここで消費税増税には、「GDPの半分以上を占める個人消費を冷やし、経済に大きな打撃を与える。増税で経済が崩壊したら元も子もない」という強い批判があります。

たしかに、消費税増税は、短期的には経済成長率を下押しします。しかし、長期的には経済成長率に与える影響は軽微であることが、経済学の研究で明らかになっています。「そんなバカな」と思うかもしれませんが、日本よりはるかに消費税率が高い諸外国の経済成長率を見てください。

以上から、消費税増税を財源の中心に据えるのが、最も合理的です。防衛力増強も少子化対策も、一刻を争う課題。「やらない」という選択をしないなら、いかに消費税増税を円滑に進めるか、早急に議論する必要があります。

結局、増税は立ち消えか

では、向こう数年のうちに、消費税増税は実施されるのでしょうか。自民党内外で「増税するなら国民に信を問うべき」と言われる通り、カギを握るのは国民の世論です。

昭和の時代から「消費税に関わると選挙に負ける」と言われ、消費税は歴代政権を悩ます鬼門とされてきました。逆に、土井たか子社会党党首が消費税について「ダメなものはダメ」と言い放ち、国民の圧倒的な支持を集めました。

岸田首相は、法人税増税の先に消費税増税を視野に入れているようです。しかし、今後、世論の風向きが悪くなったら、政権を維持するために方針転換するでしょう。筆者は次のような展開を予想します。

国民の「増税はまっぴらごめん」「今はコロナ禍とインフレで緊急事態。増税するとしても今じゃない」という声に押されて、岸田首相は法人税の増税を「当面見送り」、そして「経過的な措置」として国債発行で賄う。数年後コロナが終息するが、すでに岸田首相は政権の座になく、消費税も含めて増税の話はすべて立ち消えになっている……。

ということで、消費税はもちろん法人税の増税も実現せず、国債発行が主たる財源になるでしょう。増税が回避されて、国民は「やれやれ」と胸をなでおろすわけですが、それが本当に国民・国家にとって良いことなのでしょうか。冷静に議論を深めたいものです。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。
Facebook:https://www.facebook.com/takeshi.hioki.10
公式サイト:https://www.hioki-takeshi.com/
 

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