防衛力増強には結局「消費税増税」しか道はない 国民が求める「歳出削減」は焼け石に水

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主たる財源にするなら、やはり予算規模が大きいものがターゲットになります。2023年度当初予算案の一般会計歳出総額114兆3812億円のうち最大は、社会保障関係費36兆8889億円です。

日本では、2040年代後半まで高齢者が増え続けるので、医療・介護などの社会保障関係費はどんどん膨らみます。こうした中、逆に社会保障関係費を削減するというのは高齢者や病人の切り捨てを意味し、国民の猛反発が必至。実現は到底不可能でしょう。

社会保障関係費は、削減するどころか、大きく増やさないのが精一杯。2番目に予算規模が大きい国債費も同様で、歳出削減は主たる財源として期待できません。国が歳出削減に努めるのは大切ですが、財源の問題とは分けて考える必要があります。

国債発行は安定財源として不適切

2つ目の主たる財源の候補が、国債発行です。国債を新規に発行するのがオーソドックスな方法ですが、それに加えて最近、「60年償還ルール」の見直しという方法が議論されています。

「60年償還ルール」とは、期限を迎えた国債の一部を新たに発行する借換債と現金による払い戻しを組み合わせ、発行60年後までに完済するという財政運営ルールです。この償還年数を60年から80年などに延長すれば、年ごとの償還費用を減らすことができます。

ただし、償還費用の減少で一般会計の赤字国債は減りますが、その分、特別会計の借換債が増えます。つまり、政府全体で見ると、償還年数を延長しても収入が増えるわけではなく、実質的には財源になりません。

日本では1990年代以降、国債発行で財政出動を繰り返してきたことから、防衛力増強・少子化対策でも国債発行を財源にしようという意見があります。国債発行は財源の3つの候補の中で実行は最も容易ですが、財源として適切でしょうか。

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