台湾有事なら日本も軍事介入迫られる合意の意味 日米外務・防衛の閣僚会議「2プラス2」真の狙い

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軍事支援さえ世論の多数の支持を得られないアメリカ

バイデン政権のウクライナに対する軍事支援について、「アメリカはウクライナのためにやり過ぎている」と回答した人は、2022年3月の世論調査では7%だったが、同年5月には12%に上昇。逆に「アメリカにはウクライナを守る義務がある」と答えた人は、50%から44%に下落した(ピューリサーチセンター調査)。特に、共和党支持者の間で批判が増えているという(モーニングコンサルト社調査)。

対ロシア経済制裁についても、継続を求める世論はずっと半数を大きく超えてきたが、ガソリン価格の高騰などに対する生活不安の声も確実に高まっている。軍事介入どころか軍事支援さえ世論の多数の支持が得られないのが、アメリカの現状なのだ。

また、2022年7月に行われたシカゴ外交問題評議会の世論調査によれば、中国が台湾に侵攻した場合、76%が外交的な関与や経済制裁にとどまるべきだと考え、65%が追加支援として台湾へ武器を提供することを支持。中国による台湾封鎖を阻止するためにアメリカ海軍艦隊を派遣するべきだと考える人は62%だが、台湾防衛のためにアメリカ軍を派兵することを支持したのは40%にとどまっている。

ヨーロッパとアジアで同時に地域紛争や危機が進行している状況において、アメリカ国民は軍事介入に一貫して消極的であり、アメリカ政府としては、同盟国に軍事的役割の多くを期待せざるをえない。台湾有事におけるアメリカの単独介入をアメリカ国民が許容することはありえず、もしも介入するとしても、必ず日本と共同での軍事介入が条件となるだろう。

防衛3文書も2プラス2合意も、そのような文脈で理解するべきだ。しかし、岸田政権の説明も新聞やテレビなどの大手メディアによる報道も、その点をあいまいにしている。それは、日米両国が台湾のために共同で戦うことを、日本の世論が許容するとは思えないからだろう。アメリカ側はおそらく理解していないが、憲法も含めた現状の日本の法体制下ではそれが難しいという現実もある。

だが、国民の頭越しに日米両政府だけで台湾共同防衛の議論を進めていくことは、日本国民にとっても日米同盟にとっても不幸な結果しか招かない。

山本 章子 琉球大学准教授

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やまもと あきこ / Akiko Yamamoto

琉球大学人文社会学部国際法政学科准教授。1979年北海道生まれ。一橋大学法学部卒。編集者を経て、2015年一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。沖縄国際大学講師、琉球大学専任講師などを経て2020年4月から現職。専攻・国際政治史。著書に『日米地位協定 在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書)、『米国と日米安保条約改定――沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年、日本防衛学会猪木正道賞奨励賞受賞)など。

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