「リニアいつ開業?」駅設置に沸いた飯田市の誤算 企業の誘致ままならず、住居移転にも遅れが
そこで、「川勝知事に伝えたいことはあるか」と佐藤市長に水を向けてみたが、「違う自治体の話なので内政干渉になってしまう。コメントは控えたい」とのことだった。神奈川や山梨など他県の工事にも口を出す川勝知事とはえらい違いだ。
「いま工事を始めないと2027年の開業に間に合わない。準備工事だけでも今月中に始めたい」とJR東海の金子慎社長が川勝知事に懇願してから2年半が経過した。単純に考えれば今工事を始めても開業は2030年にずれこむというのに、トンネル工事が大井川の水資源や南アルプスの環境への影響に及ぼす影響について川勝知事が納得していない以上、さらに時間がかかるのは必至だ。
「静岡問題」が沿線に及ぼす影響
リニアをめぐる静岡県、国、JR東海のやりとりを見ていると、静岡県の姿勢には違和感を持たざるをえない。
最近でも2022年12月3日、大井川の水資源問題を議論する国の有識者会議のメンバーと流域市町の首長による意見交換会が島田市で行われ、JR東海が実施の意向を示しているトンネル掘削前のボーリング調査を多くの首長が支持した。流域利水者の意見を代弁する立場にある流域首長は工事に断固反対というわけではないのだ。さらに、JR東海が提案したトンネル工事で県外に流出する水と同量を田代ダムの取水抑制で相殺する案は、全量戻しに代わる有力な案に思えるが、川勝知事は「トンネル湧水の全量戻しにはならない」と否定する。
工事の遅れがリニア沿線自治体の街づくり計画や住民感情に悪影響を及ぼしているという事例は飯田市だけではないだろう。静岡工区の状況が直接ではないにせよ、他県の人々の生活の歯車をきしませている。こうした事態を一刻も早く終わらせる必要がある。
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