「リニアいつ開業?」駅設置に沸いた飯田市の誤算 企業の誘致ままならず、住居移転にも遅れが

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市は、東京や名古屋との交通アクセス改善を武器にさまざまな企業の本社企業や研究開発拠点の誘致を目論んでいる。しかし、ここで誤算が生じた。企業に飯田への進出を打診すると「リニアはいつ開業するのかと聞かれ、答えに窮してしまう」と佐藤市長がこぼす。

佐藤健・飯田市長
リニア中央新幹線長野県駅の起工式であいさつする飯田市の佐藤健市長(記者撮影)

リニアは当初2027年の品川―名古屋間開業を目指していたが、静岡県の川勝平太知事はトンネル工事が大井川の流量や南アルプスの環境に与える影響を理由に静岡工区の工事を認めておらず、2027年の開業は不可能となった。

「では、いつ開業するのか」。リニア建設を進めるJR東海の金子慎社長は事あるごとにこの質問を受けるが、静岡工区の工事開始時期が決まらない以上、開業時期も決まらない。リニア開業後の飯田市がいかに魅力的な都市だとしても、リニア開業がいつになるのかわからないのでは、企業が飯田への進出に慎重になるのも当然だ。

駅用地の住宅移転問題にも影響

開業時期が決まらないことは別の大きな問題にも影を落とす。駅および周辺広場の用地買収のため住宅移転を迫られる世帯数は約190に及ぶ。すでに移転を決めた世帯もあるが、補償額などの交渉がまとまらず、移転を拒む世帯も新駅予定地の周辺には点在している。

愛着がある家に少しでも長く住み続けたいというのが人情だ。「開業時期が遅れそうなのになぜ今移転しなければいけないのかという思いが住民のみなさまの中にある」と佐藤市長は述べる。すでに転居を決めた世帯の人たちも「もう少し長く住み続けられたのではないか」と忸怩たる思いに違いない。

川勝知事は「大井川流域の住民が不安に思っている」として工事を認めないが、佐藤市長は「当市でも地下水や騒音といった環境に関する問題はあったが、住民のみなさまに丁寧にご説明してご理解いただいた」と話す。それだけに、一刻も早い静岡工区の工事開始を期待する。

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