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首相官邸が「日銀の政策修正」にピリつく複雑事情 「政治の支配」をめぐり日銀と官邸を包む緊張感

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人事を通じた政策介入が続いた10年。新体制は、政治と日銀の関係にも転機となるか。

国会での安倍元首相と岸田首相
リフレ派的な政策を実現しようとした安倍元首相。岸田首相は特定の金融政策にこだわりはない(写真:時事)

特集「日銀 宴の終焉」の他の記事を読む

1月16日発売の『週刊東洋経済』1月21日号では「日銀 宴の終焉」を特集(アマゾンでの予約・購入はこちら)。黒田日銀が推し進めた「異次元緩和」という10年の宴は終わり、金融政策は正常化へ舵を切ろうとしている。この壮大な社会実験は何をもたらしたのか。4月に発足する新体制はどこへ向かうのか。マーケットは、日本経済は、これからどうなるのか。この記事は本特集内にも収録しています。

官邸が受け取った“意図”

暮れも押し詰まった昨年12月20日、日本銀行から首相官邸にこんな連絡が入った。

「長期金利の変動レンジを、プラスマイナス0.25%程度から同0.5%程度に拡大する」

重要な政策変更が行われた場合、日銀総裁が首相に電話をかけるのは慣例になっている。政策変更の有無はその日の朝に「情報」として上がってきていたので連絡そのものに違和感はなかったが、首相周辺は複雑な思いで受け止めた。

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昨年夏から秋にかけて、日銀と官邸は静かな緊張に包まれていた。大幅な円安と物価高は庶民生活を直撃し内閣支持率も急落。それでも動く気配を見せない日銀に対して首相の岸田文雄の周辺では不満が高じていた。

「具体的な方策は任せるから何とかしてくれ」。首相側近の一人は当時こう話していた。

それから数カ月。ようやく日銀が腰を上げた。官邸の意向を承知のうえで年末まで決定をずらしたのだから、メッセージとしては「政治の言いなりにはならず、独立性を維持する」ということなのかもしれない。ただ、官邸内にはこんな見方も浮上している。

「この政策変更は日銀総裁人事に絡んだメッセージも含まれているのではないか」

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