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日銀「10年の異次元緩和」が金融市場に残した禍根 翁邦雄氏「黒田総裁は流行りの理論を過信した」

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経済学者・翁邦雄氏に10年間にわたる黒田日銀の総括を聞いた。

翁氏は「YCC(イールドカーブ・コントロール)は金融市場の『ロックダウン』に近い状況」と語る(撮影:尾形文繁)

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1月16日発売の『週刊東洋経済』1月21日号では「日銀 宴の終焉」を特集(アマゾンでの予約・購入はこちら)。黒田日銀が推し進めた「異次元緩和」という10年の宴は終わり、金融政策は正常化へ舵を切ろうとしている。この壮大な社会実験は何をもたらしたのか。4月に発足する新体制はどこへ向かうのか。マーケットは、日本経済は、これからどうなるのか。
リフレ政策に批判の論陣を張ってきた翁邦雄氏。長年、金融政策の論壇を牽引したレジェンド経済学者に、黒田日銀10年の総括を聞いた(翁氏と時に激しく火花を散らしたリフレ派の首領・岩田規久男氏のインタビューはこちら)。

とことんやったがダメだった

――この10年間の日銀の異次元緩和の成果と課題をどう評価しますか。

“成果”は、逆説的だが、金融政策だけで物価は上がらないというのがわかったことだろう。金融緩和で物価が上がるか否かの長い水掛け論が続いた後、実際にとことんやってみたがダメだったということだ。

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この10年間で日本経済は衰退してしまった。どうやってこの長期停滞から抜け出すかが課題だ。今の日本銀行がやっているYCC(イールドカーブ・コントロール)は金融市場の「ロックダウン」に近い状況で、ここからどう抜け出すのかも課題になる。

――ロックダウンというのはユニークな表現です。

中国ではゼロコロナ政策のもと、ロックダウンで人々の動きを止めることでコロナの感染拡大を防いだ。当初は成功したかに見えたが、コロナへの耐性強化といった課題は先送りされてきたためロックダウンを解けば感染が急拡大してしまう状況になった。

これと似ているのがYCCによる金利の制御だ。YCCという政策の下で日銀は、政策金利である短期金利だけではなく、本来市場が決めるはずの10年物の国債金利まで固定している。短期と10年物の長期金利を超低位のままロックダウンしてきたに等しい。経済活動の活性化は達成されず、逆に生産性の低い企業の温存など、弱い経済を作り出した。長期停滞をもたらす本質的な課題への取り組みは先送りにされた。

市場経済にとって重要な「価格機能」を金利が果たせなくなったため、経済に異変が起きても金融市場からのシグナルが出なくなっているのは大問題だ。

――異次元緩和は金融市場に禍根を残したということでしょうか。

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