混迷を深める日銀の新総裁人事。金融緩和の後始末を誰が引き受けるのか。
政治から消えるリフレ派
4月に終わりを迎える黒田日銀より一足先に、アベノミクスの勃興を支えた10年余に及ぶ活動を、ひっそりと閉じた議員連盟があった。
議連はかつて自民党内での日本銀行批判の先鋒になり、大胆な金融緩和を提唱した。2011年、党きってのリフレ派議員、山本幸三氏が中心となって設立。会長には首相への返り咲きを狙う安倍晋三氏が就いた。その議連で安倍氏は、インフレで景気拡大を起こすリフレ派の経済政策に親しみ、後に知恵袋となる経済学者の浜田宏一氏や岩田規久男氏と出会った。
22年10月24日、永田町・自民党本部の会議室で開かれた解散式。「アベノミクスは永遠です!」。山本氏が高らかに最後のあいさつを終えると、出席した議員からはまばらな拍手が鳴った。
その山本氏も21年の総選挙で落選。「今がデフレを脱却できるかどうかの正念場なのに」と山本氏は肩を落とす。「かつてのようなリフレ派の勢いが政治にない」。
物価高は家計を苦しめるもの。円安と相次ぐ値上げで、さまざまな世論調査がそうした市民の声を映し出す中、昨年来、政治の風向きは変わっている。
日銀政策委員会の審議委員人事をめぐる昨年の一幕は、その象徴だった。リフレ派の審議委員、片岡剛士氏が同年7月に5年の任期を終えるため、後任を決める段になった。安倍氏・本田悦朗氏といった過去10年、審議委員にリフレ派を送り込んできたラインが推薦したとみられる識者は、第一生命経済研究所の永濱利廣氏だった。
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