一方で、ファーストリテイリング会長の柳井正さんは、「円安はデメリットが多い」と発言して話題になった。同社は為替のプラス影響がなかったとしても当期利益が過去最高だったことを客観的に付け加えておきたい。各国で、品質の良さに加えて、コロナ禍での普段着(LifeWear)のコンセプトが着実に認められたためだろう。
さて決算短信を続けて見てみると、販売費及び一般管理費の欄に人件費は年間3186億円とある。これはあくまで販売費及び一般管理費の人件費であって、売上原価に少しは含まれているであろう人件費は合算していないとみられる。ただ比率はさほど多くないと推計されるため省略して論を進める。
ファーストリテイリングは人件費3186億円を払っても、その後に営業利益2973億円を出している。このうえで、グローバルな競争を勝ち抜くための人件費アップなのだ。あくまで上記の人件費は連結の数字であり、国内に限定した人件費はわからない。
あくまで仮に対象となる8400人全員が年間100万円の報酬増になるとしてみよう。そうすると8400×100万円=84億円となる。実際の増加額からは外れるかもしれないが、これぐらいの規模でのコストアップは許容しているはずだ。経営者とすれば大きな判断だろう。しかし営業利益と比べると、お金の使い方として理にかなうと私は思う。
ファーストリテイリングと日本人の給与
日本人の平均給与は2021年で443万円だ。これはずっと上がらないといわれてきた。正確には、賃上げは微小になされているのだが、物価の値上がりで実質賃金は下がっている。厚生労働省が1月6日に発表した2022年11月の毎月勤労統計調査(速報)では実質賃金は前年比3.8%下落となり、8カ月連続のマイナス。それだけではなく、2014年5月以来の大幅なマイナスであり、物価の上昇ペースに賃金の上昇がまるで追いついていない。
日本は岸田文雄内閣のもとで、良くも悪くも増税される可能性が高い。さらに少子高齢化、景気の不透明。社会保障費の労使折半の負担が大きいなど、賃上げをさほど前向きにさせない雰囲気が充満している。
しかしそのなかでファーストリテイリングは海外での売上高を順調に成長させたり、無人レジなどで経営の合理化や効率化を図ったりしている。さらにファーストリテイリングがかつて発表していた数字によれば社員の勤続年数もさほど長くはなく能力主義を徹底している。
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