知らぬ間に食べている?食卓にひそむ"問題点" フードテックを享受する人が知らない「真実」

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――それは何でしょうか?

2021年に米バイオミルク社が世界で初めて開発に成功した、母体から採取した細胞に栄養素を加えて培養した人造ミルクで、母乳とほぼ同じという触れ込みで、商品化が進んでいます。コロナ禍の商品不足と、ビル・ゲイツやジェフ・ベゾスらが「温暖化ガスの原因になる粉ミルクを阻止する」目的で創設した脱炭素ファンドからの出資が、大きく後押ししました。

培養母乳も、培養肉と並んでまだ不確実性の高いテクノロジーなのですが、危機を背景にすると、一気に市場に押し出され、広まるわけです。「食」は身体だけでなく、文化や伝統、環境、政治、社会、安全保障など、多方面に影響するもの。

消費者として、受け身でいないよう、今後は特に注意しなければなりません。

「食を選ぶ権利」を手放さないこと

――コロナ危機を背景にした“ワクチンレタス”にも驚きました。

“注射嫌いの子”にはワクチンレタスを食べてもらうという、漫画のような話です。

「食べるワクチン」自体は以前から研究されていましたが、いまカーネギーメロン大学とカリフォルニア大学が研究開発を進めているワクチンレタスの問題は、「mRNAワクチン」という、全世界でまだ治験中のものを、レタスにまで入れてしまおうというその発想にあります。

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ご存じの通り、mRNAワクチンは現時点でも未知の部分が多く、長期的な人体への影響も検証されていません。これを子どもの口に入れて将来なにか起きても、もちろん誰も責任はとらない。日本は規制が緩いので、気をつけないと表示がつくかどうかさえわかりません。

――確かにそうですね。

でも新しい技術の詳細はつねに、企業秘密もあって消費者には公開されず、安全性の議論をすると平行線になるでしょう。つまるところ、個別のテクノロジーがどこまで安全かという問題以上に大切なのは、私たちが「食を選ぶ権利」を手放さないことのほうなのです。

これは間違いなく、大人が子どもに残せる、貴いものの一つですよ。

フードテックは世界を救う、人々を幸福にする、と政府や企業は言いますが、それを「公益」にするには必須条件があるのです。消費者の選択肢や情報の透明性、制度設計に当事者を入れること。テクノロジーと引き換えに国内の生産者を潰してしまっては、本末転倒ですから。

いまの小学生に「鮭ってどういう魚か知ってる?」と聞くと、切り身の絵を描く子が多い。スーパーでしか見たことがないからですね。食べ物はどこから来ているのか、誰がどうつくっているのか、そしてすべての食べ物は別な命であること――テクノロジーがノンストップで進む今、食について考える教育の重要性は、かつてないほどに高まってゆくでしょう。

堤 未果 国際ジャーナリスト

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つつみ みか / Mika Tsutsumi

ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業、ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科卒業。国連、アムネスティインターナショナルNY支局員、米国野村証券を経て現職。日米を行き来しながら取材、講演、メディア出演を続ける。著書に「報道が教えてくれないアメリカ弱者革命」「ルポ・貧困大国アメリカ」(3部作)「沈みゆく大国アメリカ」(2部作)「政府はもう嘘をつけない」(2部作)「アメリカから〈自由〉が消える」「核大国ニッポン」など多数

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