東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資 #ウクライナ侵攻、危機の本質

ロシアの大規模攻勢を跳ね返すウクライナの自信 「全領土回復」で米欧との意思が一致、軍事支援強化へ

11分で読める
  • 吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長
2/5 PAGES
3/5 PAGES

これは2023年1月5日のアメリカとドイツ両国の共同首脳声明に反映された。アメリカはブラッドレー歩兵戦闘車を、ドイツはマルダー歩兵戦闘車をそれぞれ提供する方針を明らかにした。アメリカ政府は1月6日発表した総額約30億ドル(約4000億円)の追加軍事支援に、ブラッドレー50両を含めた。

今回の追加支援の規模は、1回の支援額としては過去最大となった。今回の支援には対戦車ミサイル500発も含んでいる。ドイツはアメリカに続いて地対空ミサイルシステム「パトリオット」も送る。フランスも兵員装甲車の供与を発表。米欧はウクライナの地上戦での攻撃能力を増強する方向で一斉に動き出した。今後、アメリカ・イギリス・ドイツから戦車が提供される可能性も十分にある。

ブラッドレーは、ウクライナ側がアメリカ側に以前から求めているエイブラムス戦車とは異なる軽戦車だ。歩兵の輸送に加え強力な対戦車ミサイルを装備しており、イラク戦争ではイラク軍戦車を多く破壊した実績から「戦車キラー」と呼ばれた。

ウクライナ軍関係者は、ぬかるんだ戦場で戦車より機動的に動くことができ、ロシアの戦車部隊を相手に戦闘もできるブラッドレーのほうが望ましく「維持が難しいエイブラムス戦車はそれほど強く望んではいない」と打ち明ける。そもそもロシア軍の戦車はすでに相当部分が戦闘で破壊されており、ウクライナ側は今後の地上戦でそれほど脅威になるとは考えていないという事情もありそうだ。

ロシア領内の攻撃をアメリカが容認

もっとも、ロシア軍が近く大規模攻勢をかけてきた場合、上記した米欧からの攻撃用兵器は戦闘開始には間に合わないとみられる。この場合、ウクライナ軍は当面ハイマースのほか、アメリカなどから供与された榴弾砲やドローンを使って攻撃するという。

2022年夏以来の反転攻勢で、ウクライナ側に戦局の主導権をもたらす「ゲームチェンジャー」になったのはハイマースだ。2023年には「ドローンが新たな主役になる」と軍事筋は指摘する。ドローンはアメリカから多数供与されているが、これとは別に、旧ソ連時代には軍需産業の中心地だったウクライナは軍需企業がよみがえりつつあり、現在では自国製攻撃ドローンの開発に躍起となっている。

2022年12月21日、ウクライナのゼレンスキー大統領を招いて開いたワシントンでの首脳会談で、バイデン大統領は実は重要な確約をウクライナ側に示していた。アメリカ製兵器を使わなければ「ウクライナがロシア領内を攻撃するのは構わない」との方針を伝えたのだ。これにはウクライナ側も喜んだ。

次ページが続きます:
【ウクライナ軍の攻勢の内容は】

4/5 PAGES
5/5 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象