「中国経済界の良心」がコロナ政策迷走を猛批判 呉敬璉「極端から極端に走ってはならない」

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今年92歳になる呉敬璉は、現在、ある老人ホームのコミュニティで生活している。最近、夫人と一緒に自身の意志で3回目のワクチンを注射した。しかし、中国の一部の人々が不活化ワクチン(中国で多く使用されているウイルスを無毒化したワクチン)の注射に抵抗感があることも気づいている。

呉敬璉は、政府と衛生機関がより多くの科学的データとコロナワクチンの選択肢を提供し、なるべく早く高齢者のワクチン接種率を高め、コロナ対策を強固にすることを期待している。

「現在、SNS(交流サイト)上には大衆の判断を誤らせる大量の情報が出回っている。真剣な科学研究の報告や医療の専門家が科学的な根拠に基づいて行うアドバイスに耳を傾けず、あまつさえあざ笑うという状況を注視している。これでは社会に大きな混乱を招いてしまうだろう」と記者に話す。

コロナ政策
呉敬璉(Wu Jinglian)/1930年江蘇省南京市生まれ、1954年復旦大学卒業後、中国科学院(現中国社会科学院)の研究員に。1984年より国務院発展研究センター教授。改革開放初期から市場経済の導入を中心とした中国の経済改革を主導し、市場経済の旗手として不動の地位を得る。現地では、「中国経済界の良心」とも呼ばれる(撮影:玉川陽平)

「陽性率を偽って報告してはいけない」

呉敬璉はさらに次のように警告する。「聞くところによると、一部の地方では(感染者数の)報告を減らしたり、陽性率を偽って報告したりして、人々の気持ちを落ち着けているという。もし本当なら、絶対にやめさせるべきだ」

最近ネット上で拡散しているグラフは、華北地方の感染率のピークは2023年の1月で収束するというものだ。呉敬璉はこれに対し、「感染のピークはすぐに過ぎ去ると宣伝することには賛成しない」という。

「いま皆がしなければならないのは、自分の身をしっかり守ることと同時に、政府を督促して感染拡大への備えをしっかりやらせることだ。これがすべての公民の権利と義務である」

2022年の後半以降、シンガポールと香港では社会のコントロールを緩めるのと同時に、政府が積極的に市民に医療サポートを提供して、数度にわたるコロナ感染のピークを無事乗り越え、ウイルスへの免疫を身につけ、国際社会の広範な支持を得た。

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