なぜか「負けにくい人」がしたたかに実践する習慣 最強の囲碁棋士が語った「確実に勝つ」極意

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張栩さん(撮影:朝日新聞出版写真映像部・東川哲也)
天才集団と言われるプロ棋士の世界にあって、異次元の実績を持つ棋士がいる。「世界戦優勝。囲碁界初の同時5冠達成。7大グランドスラム達成。総タイトル獲得数41。史上最高勝率で1000勝達成」の肩書を持つ張栩(ちょうう)九段だ。
ふだんの彼は、驚くほどおだやかだが、ひとたび勝負となると、斬れば血の出るような鋭さと強さで対峙する。「直感は経験によって磨かれる」「負けにくいことは勝負を焦らないこと」「効率のいいものは美しい」……。実戦を勝ち抜きながら身につけてきた、勝つ技術、負けない技術は、われわれの仕事にも、人生にも効く滋養を備えている。今回は著作の『勝利は10%から積み上げる』から、「負けにくい技術」をご紹介する。

勝てる相手に確実に勝つために

あたりまえのことをあたりまえに、という意味で、「勝てる相手に確実に勝つこと」についてお話しします。

僕の過去の成績を調べてみると、超一流クラス=タイトル戦に出てくる上位10人くらいの棋士に対しては、決して大きく勝ち越してはいません。せいぜいちょっと勝ち越しているくらいで、ほぼ互角の人もいれば、負け越している相手もいます。

それにもかかわらず、僕がこれまで多くのタイトルを獲得してこられた要因は、それ以外の棋士にほとんど負けていない点にあるのだと考えています。勝率にすれば8割を超えます。

現在の囲碁界では、七番勝負や五番勝負のタイトル戦および三大棋戦の挑戦者を決めるリーグ戦を除いて、負けたら終わりのトーナメント方式を採用しています。ですから、自分より力量の劣る相手には絶対に負けないこと、勝てる相手に確実に勝つことが非常に重要です。

「勝ち碁を勝ちきること」に加えて、僕はこの点においても、他の一流棋士より少々優っているかもしれません。適切な表現ではないかもしれませんが、僕との対戦成績が互角や互角以上のトップ棋士であっても、取りこぼしが結構多いのが実情です。

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