最新「スタッドレス」氷上&雪上で試した超進化 「ブリザックVRX3」公道で体感した走りの安心感

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16インチタイヤを装着するヤリスクロス(205/65R16)は、他のクルマよりも車体がコンパクトで軽く、またエンジンの出力が低いこともあり、タイヤがクルマの性能に“勝っている”印象で、特に走りの安定感が高く感じられた。

中でも走りの安定感が高かったヤリスクロス(筆者撮影)

Q5とGLCの輸入車SUVはどちらも、19インチの大径タイヤを履く。制限速度である時速60kmあたりでコーナーを走行していると、車体の重さからフロントタイヤが少し外側へと滑り出したが、リアタイヤがしっかりと追従してグリップ力を発揮するため、それ以上滑ることはなく、安心して走行できた。

VRX3を開発したブリヂストンのエンジニアは「今日のような滑りやすい路面状況でも、自動車メーカーが(基本設計として)思い描いている運動性能を(タイヤが)邪魔しないことが重要だ」と表現する。

メルセデス・ベンツGLCは今回、唯一FRベースの4輪駆動車だった(筆者撮影)

スタッドレスタイヤを開発するにあたって行われるブリヂストンの社内評価では、直線での制動距離など、数値で示しやすい項目がある一方で、数値化しづらい発進性能やコーナーリング性能などは、社内テストトライバーなどによる感応評価を重視する傾向が強いという。

さらなるSUV化、そしてBEV化の時代へ

今回の一般公道でのスタッドレスタイヤ装着車の乗り比べは、テストコースで限界性能を試す場合と違い、一般ユーザーの実生活を前提とした走りに近い環境で、筆者自身の感応評価が行えたと思う。

ブリヂストンは今後、よりボディサイズが大きく、車重も重いSUVへのVRX3対応について、「さらなる検証と研究開発が必要だ」という見解を示していた。なお、ブリザックでは、すでに雪が深いオフロード走行を重視した「DM-V3」がラインナップされている。

現在の流れが進めば、日本国内ではさらにSUVを日常的に使う人が増えて、SUVのラインナップが拡充し、同時に車重のかさむBEV化が進むとなれば、スタッドレスタイヤのさらなる高性能化は必須であろう。今後もスタッドレスタイヤの進化をしっかりとフォローしていきたい。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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