話始め10秒でバレる「話が下手な人」の最大の特徴 「話が長い」「聞いてもらえない」人は冒頭が下手

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もし戸田さんもそのことに敏感で、本題を話すうえでの前提をしっかり伝えておこうという意図でこの導入トークをしているとしたら、さすがだなと思います。

このように、私たちの日常には前提が違えばすべてが違ってしまうことがたくさんあり、例えばあなたが誰かに「もっと頑張って欲しい」と伝えたいとします。このメッセージの前提が「これまでもよく頑張っている」なのか、「正直に言って物足りない」なのかによって、メッセージを受け取る側の解釈は変わってしまいます。

前者は「エール」と受け取るかもしれませんが、後者は「ダメ出し(批判)」と受け取るでしょう。ですからどちらの前提で伝えるのかを、本題に入る前に情報として相手に伝えておかないと、コミュニケーションがうまくいかなくなります。場合によっては真逆の伝わり方になったり、人間関係において致命的な亀裂が生じるきっかけになったりします。

前提:「これまでもよく頑張っている」
メッセージ:「もっと頑張って欲しい」

エールをもらった!
前提:「正直に言って物足りない」
メッセージ:「もっと頑張って欲しい」

ダメ出し(批判)された……

前提を伝えることはいらぬ誤解を生まないため

「頭のいい人」はこのことがよくわかっています。だから話の導入において「この話は〜という前提で展開されるものである」といった定義を行うのです。もしこの「前提を定義せよ」という提案ではイメージが湧きにくいという方がいらっしゃったら、次のような問いを自問自答してもいいでしょう。

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本題に入る前に話しておかないと誤解されてしまう可能性があることはないか?

先ほどの戸田さんの事例を思い出しましょう。戸田さんは別にVIP席で試合を観たことを自慢したかったわけではありません。テレビで観戦していただけなのに、さも競技場にいて隅から隅まで観察していたかのような過剰な(テキトーな)表現や感想を言っているわけではないと伝えたいのではないでしょうか。つまりあのトークは要らぬ誤解を生まないための予防線を張った行為と捉えることもできます。戸田さんの導入話法がクレバーだなと私が感じるのは、このあたりも大きな理由なのです。

ぜひあなたも今日から、自分が話をするときの前提を気にするようにしてみてください。先ほどの【演習問題】の続きとして、次のテーマで練習してみましょう。

【演習問題】
先ほどの【演習問題】で想像した状況において、その相手に伝えたほうがいい「前提」はあるでしょうか。具体的には、本題に入る前に話しておかないと誤解されてしまう可能性があることはないか考えてみてください。
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