ニューヨークが「ペット販売禁止」踏み切った背景 捨てられたペットでシェルターは満杯
ニューヨーク州のペット店では間もなく、犬、猫、ウサギの販売が禁じられる。繁殖施設ではペットが劣悪な環境にさらされていると動物保護団体が主張しており、そうした施設から動物が供給されるのを食い止めるために、法律で販売が禁じられることになった。
主な狙いは悪徳ブリーダーの排除
同法は12月15日、キャシー・ホークル知事の署名によって成立した。「子犬工場」「子猫工場」とも呼ばれる利益優先の大量繁殖業者を取り締まる目的で、同様の法律を導入している州は、カリフォルニア州やイリノイ州も含め、すでにいくつか存在。今回の立法で、ニューヨーク州もそうした州に加わることになる。
ニューヨーク州のペット店は減少傾向にあり、現在は80店ほどになっているが、繁殖業者からの動物の供給を止めることが今回の措置の狙いだ。こうした繁殖業者では、動物が虐待されたり、病気のまま飼育されたりしていることが少なくなく、そうしたペットが消費者に販売されることで飼い主は思わぬ治療費を支払う羽目になっている、といった批判が寄せられている。
「子犬工場からニューヨーク州への供給を断ち切る今回の措置は、罪なき動物を残酷に扱って利益を追求する冷酷な業界に内在する悪に対し、哀れみの心が勝利したことを意味する」。ニューヨーク州議会下院で法案を推進してきた民主党のリンダ・ローゼンタール議員はこのように語った。
同法案をめぐっては、動物の権利を擁護する立場の人々と、事実上の廃業に追い込まれるとして強く反対するペット店との間で激しい衝突が起きていた。ペット業界は、販売を禁止すればニューヨークの人々がペットを入手しづらくなり、闇市場の形成という意図せぬ結果につながるおそれがあると訴えている。
ペット店のオーナー団体「ピープル・ユナイテッド・トゥー・プロテクト・ペット・インテグリティー(PUPPI)」は、全面的な販売禁止は、きちんと育てられた子犬を販売している責任あるペット店を不当に痛めつけるばかりでなく、大量繁殖施設を閉鎖に追い込む効果もほとんどないと語っている。そうした繁殖施設の多くは州外にあるためだ。
ペット業界は、大半の繁殖業者はペットを人道的な基準を満たした環境で育てているにもかかわらず、動物保護団体は訴訟や調査の対象となっている悪徳業者にスポットライトを当てることで業界全体を貶めようとしている、と主張する。