米国の株価は想定よりも早く下落を始めた可能性 2023年の日経平均の下値メドも小幅に下方修正

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筆者がもっと想定外だと感じたのは、15日の11月の小売売上高だった。だが、注目したのは小売売上高の数字そのものではなく、それに対する市場の反応だった。

このことについて解説する前に、まず筆者の市場動向のシナリオについて触れさせていただく。このコラムを通じて、筆者は「2022年末にかけては日米とも株価指数が上値を探ろうが、2023年前半は下落基調」と繰り返し述べてきた(2023年を通じての見解は、前回の当コラム「2023年の『日米の株価』はどのように動くのか」を参照)。

そのためか、筆者のところに多く寄せられる質問は「馬渕さんは当面、株価指数が上がってから下がるという見通しだが、日経平均株価の高値は2万9000円ですか、それとも3万円ですか、あるいは3万1000円ですか、正確に当ててください」「高値の日はいつですか、12月中ですか、2023年の1月になりますか、そうでないなら、何月何日ですか」などとというものだ。

そう尋ねたい気持ちはよくわかる。そうした高値の水準や日付がわかれば、その価格や日までは買って買って買いまくり、それ以降は売って売って売りまくることで、予想が当たれば大儲けできるからだ。

しかし、筆者にそれがわかる能力はないので、「わかりません」と答えている。質問した方はかなり不満そうだ。「見通しが外れると非難されるので、責任逃れでわからないと答えているのだ」とお怒りになる人もいる。筆者としては、当たりそうもない数値や日付をいいかげんに答えて、その結果、質問なさった投資家の方が大損なさるのは心苦しいので、誠意を持って回答しないだけだ。

ただ、あまりにも「わからない」ばかり言っていると、「馬渕さんは何もわからない人なのか、では、この『東洋経済オンライン』のコラムを読むのをやめよう」となってしまいかねない。そのため、ある程度わかりそうなことを述べたい。それは、株価指数などの価格よりも、市場を動かしている背景要因を観るべきだ、ということだ。

株安の時期も株高の時期も主役は「金利」

筆者は今年10月半ばまでの世界市場は、アメリカを中心としたインフレ懸念とそれによる金利上昇懸念をあまりにもはやしすぎて、行きすぎた株安、同国の長期金利上昇、ドル高・円安になったと分析してきた(株式については「逆金融相場」といえる)。

それ以降は、インフレ率の緩やかながらの低下をようやく市場が評価して、行きすぎた悲観相場からの反動としての、株高、長期金利低下、ドル安・円高が生じたと考える(株式については、逆金融相場と逆業績相場の間の「中間反騰」と位置づけられる)。

この局面は、株安の時期も株高の時期も、主役は「金利」だ。つまり、インフレを恐れていたときは「同国の連銀が政策金利の引き上げを加速するので株価は下がる」という論理だった。その後にインフレ懸念が薄らぐと、「利上げに歯止めがかかるかもしれない」という期待が優勢となり、株価は上がったわけだ。

次ページ今後の主役は「金利」から「景気」へ
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