米国の株価は想定よりも早く下落を始めた可能性 2023年の日経平均の下値メドも小幅に下方修正

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このため、例年よりもクリスマス商戦が早期に前倒しされているとみられ、通常の季節変動とは異なる小売りの売り上げの動きとなって、データが攪乱されていることもあるだろう。

筆者が注目したのは、アメリカの個人消費についてではなく、弱い小売売上高に対する市場の反応だ。もし「旧局面」であれば、弱い経済統計は金利先高観を抑えるとして株価が上がったところ、この日のNYダウは前日比で764ドル安と大きめの下落となり、翌16日も同282ドル安と続落した。

つまり、弱い経済統計は景気悪化を増幅するとの市場の解釈であって、株式市場が逆業績相場という下落基調の「新局面」に移行した可能性がある。

2023年の方向性不変、日経平均下値は2万5000円メド

筆者は、2022年内はまだ「旧局面」における日米などの株価指数の上値探りが続くことで、日経平均株価が大きく上昇する、との予想を以前は掲げていた。

もちろん、日米の株価が天井「圏」に差しかかったとしても、「天底荒れる」との格言どおり、短期的には株価指数はいくらでも上に下にも振れるだろう。ただ、総じては「日経平均は筆者の当初想定より低い水準で、見込んでいたよりも早い時期に、下落局面入りを濃厚にしている」と見通しを変えざるをえない。読者の皆様にはお詫び申し上げたい。

それでも、主要国の株価が景気や企業収益の悪化から「2023年前半に下落していく」という流れの予想自体は変更する必要が薄いと考えるし、下値のメドも、前回のコラムで示したように「NYダウが3万ドル、それにつれて日経平均が2万6000円、アメリカの10年国債利回りは2.5%、ドル円相場は1ドル=125円」を「大きくは」変えようとも思わない。

ただし、日経平均は下落相場の起点となる水準が当初見通しよりもかなり低くなったため、下値メドについては2万5000円に小幅下方修正したほうがよいだろう。

最後になりましたが、読者の皆様におかれましては、本年も当コラムをご愛読賜り、心より感謝申し上げます。どうぞよいお年をお迎えください。

(馬渕氏の次回配信は2023年1月16日の予定です。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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