中国・北京市で新型コロナウイルス感染が急速に拡大している。商店は休業し、飲食店にも客がほとんどおらず、まるでゴーストタウンの様相だ。習近平指導部がコロナを徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策を急転換した代償が浮き彫りとなっている。
ゼロコロナの変更は段階的かつ管理された形で進むとの期待に反し、習指導部は急転換でコロナ流行を容認。中国当局は正確な感染者数の把握を断念したが、北京市内ではわずか数日で家族全員や職場全体に感染が広がったと証言する人もおり、医療システムで見劣りする他の地域では、状況がさらに悪化する恐れもある。
中国、無症状感染の公表取りやめ-検査義務付け断念で実態把握困難
北京の住民は自宅に閉じこもっている。コロナ感染を恐れているためか、既に感染したためだ。多くの食料品店は必需品を供給するため引き続き開いているが、フードデリバリーなどは体調不良で欠勤が相次ぎ遅れが生じている。こうした状況を踏まえると、中国経済は来年にゼロコロナ脱却によるプラス効果が表れ始める前に悪化を余儀なくされる公算が大きい。
北京市の住民で、エミールと名乗るプロジェクトマネジャーの男性は「私の職場全体が陽性となり、勤務できていない」とし、「市内の誰もが発熱したり、頭痛に悩まされたりしているように見受けられる。北京はゴーストタウンのようだ」と話す。
「ゼロコロナ」緩和、中国で感染急増か-死者200万人超との推計も
感染して診療所にいた50歳代の女性は親族だけでなく、友人の多くも陽性で、電話やソーシャルメディア経由でコロナの経験や情報を共有していると匿名を条件に述べた。
コロナに感染しているかどうかに関係なく、今回の急な政策変更には国内で驚きが広がっている。どのような手段を使ってでもコロナを封じ込める必要があると国営メディアが数年にわたり伝えてきた経緯もあり、その分不満を抱く市民は多い。
コロナが流行する中でも、共産党は習氏の戦略が「歴史の試練にも耐えられる」と主張しているが、同氏自身は今回の政策転換に関して沈黙を守っている。