海外鉄道旅、筆者が被害に遭った「危険な手口」 国別の治安レベルとは尺度がまったく違う

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ヨーロッパの駅構内で、悪意はないものの、「スモールマネー」などと声をかけてくる人もいる。小銭に崩して欲しいのかと思いきや、「故郷へ行く切符代が足りない」などと言い出される。彼らは大きな金額は要求せず、1日中、駅構内を歩き回って1ユーロ程度の小銭を集めるのである。こちらも駅ではさまざまなホームへ何度も移動して列車を撮影していたので、何度もその男とすれ違ってしまう。日本とは状況がかなり異なる。

自国民ではない人たちが犯罪に手を染めているケースが多く、スリなどに遭うのは大抵が旅行者なので、地元民は治安が悪くなっていることに気付いていないというのも厄介な部分で、個人主義なので、治安正常化意識の希薄さも感じる。

警察に、犯罪に遭ったことを届けることになるが、警察は「また日本人か」といった顔をするだけである。海外旅行保険の関係で警察での書類は大切であるが、日本と違って、窃盗は「盗まれるほうが悪い」というのが基本姿勢で、「お気の毒に」という顔をされれば良心的な警察である。

スリ遭遇の対処も考えておく

昔から日本人はスリなどの被害に遭いやすいとされていて、それが現在はさらに顕著になっている。同じ東洋人でも韓国人や中国人は日本人ほどスリなどのターゲットになりにくい。それは、日本人は現金を持っている可能性が高いからである。

キャッシュレス化が進んだとはいえ、日本はまだまだ現金主義の人が多い。「日本人イコール現金」のイメージを払拭するためにも、海外では現金を最小限にとどめたほうがいい。人前で多額の紙幣などを見せてしまうのは絶対禁物で、「奴は現金を持っている」と認識されると、何時間でもつけ回して隙をうかがうのだ。

海外でキャッシュレス化が進んでいる背景には、犯罪抑制という考えもあり、現金がほとんど流通しなくなったスウェーデンでは犯罪も減ったという。スリなどにしてみれば、盗む対象がなくなったのである。正確には「犯罪が減った」のではなく、スリ犯が別の国へ移動したと考えるのが妥当だ。

しかし、窃盗被害を完全に防ぐ手立てはないので、窃盗はある程度あることを前提にした所持品、荷物作りも必要である。クレジットカードの複数化、保管場所の分散化、パスポート番号、緊急連絡先などのメモ、インターネット環境も不可欠なので、予備のスマートホンも有効であろう。写真撮影に力を入れている人は、旅行中にデータをコピーしたり、クラウドへ保存したりも、カメラを盗まれた場合に有効である。

日本人は「整った身なり」という特徴を感じることもあり、もっと普段着で旅ができるようにする必要も感じる。どうしても出稼ぎ労働者目線からすると、綺麗な格好で観光旅行という姿は、妬まれる可能性大に感じる。

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