海外鉄道旅、筆者が被害に遭った「危険な手口」 国別の治安レベルとは尺度がまったく違う

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同じ都市でも安全度は異なり、どうしても観光客が集まる地域、そして鉄道ファンには残念ながら国際列車が発着するような大きな駅、および周辺は一般的に治安がよくない。スリ、置き引き、ひったくりといった犯罪が絶えない場所である。夜行列車、地下鉄、地下鉄駅構内も危険度が高い場面だ。前述の安全な国でも、鉄道旅行は一般的に危険な場面があると自覚したほうがよく、油断してはならない。

イメージと実態が異なることも多い。ヨーロッパ主要駅、大混雑のインドの駅、はたまた人混みのネパールの市場、この3カ所でいえば、インドやネパールで危険を感じることはなかった。インドの鉄道駅で列車の写真を撮っていると、裸足の男などから「鉄道の写真を撮るんだったら俺を撮れ」と声をかけられるが、そこに悪意はない。

しかし、ヨーロッパの主要駅で何かを尋ねられたら、「ほかの目的があるのかもしれない」と警戒したほうがいい。1人が訪ねごとをし、気をそらせておいて、仲間がバッグに手を入れるなどはスリの常套手段である。尋ねごとをする人は概して、いわば身なりのきちんとした人だったり、旅人を装ったりしているので「悪意なのか、本当に困っているのか」の判断が難しい。

筆者はバックパックごと盗まれた

もう10年程昔になるが、私は国際列車の車内で、バックパックごと盗まれるという体験をした。車両は日本の特急列車と同じような座席で、コンパートメントではなく、荷物を残して席を離れたわけでもない。アムステルダム発、ブリュッセル北駅、ブリュッセル中央駅経由ブリュッセル南駅行きである。ブリュッセル北駅が近づいたところで、通路を挟んだ斜め前方に座っていた男が、「次の駅は終点じゃないですよね?」と尋ねてきたので、「はい、終点は南駅、そこが一番大きな駅で街の中心にも近い」というようなやり取りをしたが、ブリュッセル北駅発車時点で、荷物棚においた私のバックパックがなくなっていた。

すると、前述の男は「大変だ」と、車掌に通報してくれるのだが、よくよく考えてみると、その男は窃盗犯の仲間で、私の気をそらせていたのに違いないと思った。後で考えるとなのだが、周囲には地元の人が大勢いるのに、アジア人にブリュッセルの事情を尋ねるのは不自然である。

このときは妻も窓側に座っており、私のバックパックは10kgまではないものの7~8kgの重さはあったはずで、それをわれわれに気づかれずに荷物棚から盗んだことになり、かなり手慣れた犯行といえる。しかも、仲間の男はわざわざ車掌に通報したのだから、犯罪者に「余裕」すら感じてしまう。

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