平気でネット通販する人が知らない「2024年問題」 タイムリミットが迫る物流危機を回避できるのか

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「フィジカル」とは「肉体・身体」の意味でよく使われるが、もともとは「物質的なもの」という意味。「フィジカルインターネット」とは、物体=荷物をインターネットのように大量かつ高速に送れる「物流ネットワーク」を表す言葉だ。インターネットやデジタル技術を使って物流システムを効率化するだけでなく、インターネットの仕組みを物流に応用して産業構造そのものをイノベーションしようという取り組みである。

1990年代に商用サービスが始まったインターネット以前のデジタル通信は、発信者と受信者を通信回線で直接つないでデータを送っていた。インターネットでは、データを標準サイズの「パケット(小包)」に分割し、「TCP/IP」と呼ばれる標準通信手順を使い、異なる通信ネットワークを相互接続する「ハブ/ルーター」などの通信機器を経由してデータを送っている。混雑している通信回線を避け、空いている通信回線を経由することで、効率的に大量のデータが送れるようになったわけだ。

これを物流に当てはめると、パケットは「段ボール箱」や荷物をまとめて運ぶための「パレット(荷台)」、TCP/IPは「伝票・納品書」、ハブ/ルーターは「倉庫・物流施設」に相当する。つまり、物流ネットワークを「フィジカルインターネット」として機能させるためには、ロボットなどの機械で荷物を自動的に搬送できるように段ボール箱やパレットを標準化し、伝票・納品書などのデータも標準化して中小事業者を含めた情報連携基盤を構築する。

さらに倉庫・物流施設も大量の荷物を効率的に捌けるように徹底的に自動化・機械化を行い、道路、鉄道、フェリーなど輸送ネットワークの中継拠点に配置する必要がある。今、日本だけでなく世界的に物流施設の需要が高まっているのは、ネットショッピングなどのEC需要が拡大しているだけでなく、物流のフィジカルインターネット化が進み出しているからだろう。

2024年問題解消のカギを握る「標準化」

「物流分野で標準化されているのは、世界的にみてもコンテナのサイズと欧州で使われているユーロパレットしかない。日本でもT11型パレット(1100×1100ミリ)を標準と定めたが、本格普及はこれからだ」。大和ハウス工業グループの物流ITベンダー、フレームワークスの秋葉淳一社長は、物流分野の標準化動向をそう解説する。

トラックドライバーの勤務時間を調査すると、実際に運転している時間は全体の65%程度で、荷物の積み降ろしの荷待ち時間が13%、ドライバー自らが荷物の積み降ろし作業を行う荷役時間が13%を占める。つまり、倉庫・物流施設の自動化・機械化が進めば、2024年問題も一気に解消する可能性もあるわけだが、そのカギを握るのが標準化である。

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