なぜ日本のイスラム教徒が辛い目にあうのか 日本国内のイスラム教徒から深刻な訴え

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ショックだったのは、イスラム教徒の子どもたちも学校で差別され、いじめを受けたと聞いたことだった。実際に学校でほかの子どもから「イスラム国!」などと言われてはやしたてられたという子どもが複数いた。日本で暮らしていて、そんな経験は初めてだったと語った子どももいた。

イスラム教徒の大人は職場で嫌がらせを受け、その子どもたちも学校で嫌がらせを受けているという見過ごせない現状がある。

各国が呼称を区別するなか、日本のメディアは…

「行徳ハラー・モスク」で祈るイスラム教徒

それは日本のマスコミが「イスラム国」という呼称を使って一連のニュースを流したことによって生じたといえる。政府や企業などが「グローバル化」への対応をことあるごとに叫ぶ時代なのに、一般の日本人の多くは日本文化以外の異文化には慣れていないせいで、ちょっとしたことで誤解や偏見を持ちやすい。社会の中に多様な母文化や母語、宗教、人種などが存在するのが大前提になっている欧米社会と比べて、メディアの中にも「多文化共生」という認識は育っていない。

たとえば、アメリカのテレビの多くは「IS」という呼称を使って、過激派グループと一般のイスラム教徒を区別するような配慮をみせている。

一方で、日本国内のテレビや新聞では、NHKが後藤健二さんの殺害発表から2週間ほどした2月なかばに「イスラム国」という呼称を使用中止にして、「IS=過激派組織、“イスラミック・ステイト”」という呼び方に改めた。こうした差別などにつながっているという声に配慮したものだろう。これが数少ない例外だ。

なんだ、日本語表記を英語にしただけじゃないかと思う人がいるかもしれない。だが、イスラム教に普段なじみがない大多数の日本人にとって、「イスラム」という言葉に触れる数少ない機会が、残忍な殺戮(さつりく)を繰り返すグループの映像や情報とセットになるとするならば、報道での「イスラム国」という言葉の使用そのものが「差別」「嫌がらせ」につながっている、と考えるべきだろう。

しかも今になっても大半のテレビや新聞は「イスラム国」という呼び方を続けている。

今回、モスクで話を聞いたイスラム教徒の中に、数少ない日本人がいた。前野直樹さん(39)だ。

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