日本の報道ではわからない今の中国の「複雑さ」 ゼロコロナ政策批判だけでは見えない現状
したがって、移動を制限することにより、収束できない状況まで感染を拡大しないようにするところもある。この理由も、今厳しいコロナ政策を「仕方ない」と受け止めている人々(中高年層が多い)が納得する原因でもある。
年代による価値観の違いも大きく、中国の貧困時代から経済発展までを経験した中高年層は、「全国的には医療システムはまだ脆弱なので、コロナ政策を一気に解除したら、国がどうなるか、(あなたたち若者に)わかるか?」と子どもに言う。
先月北京から東京に出張してきた30代のエリートに話を聞くと、彼は北京で行われたデモにも遭遇したが、「日本に来てニュースを見ると、現在中国はコロナが始まった頃のアメリカで起こった混乱のように見えるが、実際は全然違う」と語ってくれた。
「中高年層が国を重視するのに対し、今の若者は個の自由を主張するが、コロナ自体にも不安を持っている。一方、封鎖される不安・将来に対する恐怖・政策解除時期の不確定さから、街に出たと思うんだ」。今後は、コロナ政策より、若者や市民の不安を払拭するのが最も重要な課題であろう。
状況は報道されているよりも複雑
SARSのとき、そしてコロナが始まった時期に奏功した封鎖政策を一気に終わらせるのは難しい。上述した成功体験や医療資源の格差はもちろん、メンツを何より重視する国民性、個性を追求するようになった若者世代への説明、地域の差による異なる対応、先進国のコロナ政策の緩和との比較、経済停滞と長期的な不安などなど、課題が山積みだからだ。
終わりの見えないコロナ政策に対し、中国社会における異なる層(年代・地位・経済力・リテラシーなど)のそれぞれの不安と関心が交差しており、実情は報道されているほど単純ではない。
中国にかかわりのある日本企業も、これからの中国との付き合いを検討する際、表面的で偏りすぎる報道だけではなく、中国社会の本質にあたる原因を深掘りしたうえで、本当のビジネスチャンスを見つけ、正しい戦略を考えるべきではないだろうか。
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