駅が「電車に乗るだけの場所」ではなくなる未来 沿線の各駅が医療、エンタメなどを役割分担
人の動きが減るならばモノも運ぼうと新幹線などを使った貨物輸送への取り組みも見られる。需要はそれなりにありそうだが、鉄道利用者の減少をカバーするまでには至りそうにない。
大都市圏の鉄道会社が人口減少社会において鉄道事業を続けながら、新たな収入を確保しようとするなら、まずは駅の機能を強化することだ。有望な資産をうまく活用しない手はない。一人暮らしの高齢者が増えるにつれて、行政サービスの窓口や医療機関、福祉施設などが集中した生活必需サービスを一元的に受けられる「便利な場所」へのニーズは大きくなる。
これまでのような乗り換えの便利さや商業施設の充実だけでなく、駅を「電車に乗るための場所」から周辺住民にとっての「便利な場所」へと生まれ変わらせるのである。
沿線の複数の駅で「役割分担」を
これまでの再開発といえば、都心のターミナル駅などで進められてきた。こうした都心型の再開発については新規計画もあるが、今後は郊外の主要駅がそれぞれにコンパクトシティーの拠点としての役割を求められる。これまでとは異なる収益を生み出す存在となれば、鉄道会社のビジネスモデルは大きく変わる。
1つの駅だけで整備が難しければ、沿線の複数の駅で「役割分担」してコンパクトシティーの機能を持たせるのでもよい。
私はこれまでいくつもの鉄道会社に招かれて経営陣と意見交換をする機会があったが、その際に沿線を1つの街と見立てて駅ごとに特徴立った開発をするよう勧めてきた。
例えば、医療機関が集中する駅、劇場や音楽ホールが集まる駅といった具合だ。こうすれば、高齢者も含めた沿線住民は駅の間を行き来するために鉄道を利用する機会が増え、通勤・通学定期券客の減少を補える。沿線住民向けの「生活定期券」をつくってもいい。
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