駅が「電車に乗るだけの場所」ではなくなる未来 沿線の各駅が医療、エンタメなどを役割分担

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電車で都心に向かうニーズは減少していく(写真:ryuji/PIXTA)
テレワークの常態化や日本社会の高齢化により、電車に乗る人の数は減少していきます。電車に乗る場所として以外に駅はどのような役割を果たすべきなのか。河合雅司氏の最新作『未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること』(講談社現代新書)より一部抜粋・編集のうえ、人口推計に基づく予測をご紹介します。

大都市圏の通勤路線は転換点にある。これまでは郊外から中心市街地のオフィス街にいかに効率よく大量に輸送するのかが問われてきた。通勤に便利な場所の地価が上昇し、そうしたところに鉄道会社のグループ会社が住宅を開発するというビジネスモデルが成功してきた。このため、郊外へと都市は肥大化を続けてきた。

しかしながら、今後は大都市近郊の衛星都市で75歳以上人口が急速に増え始める。かつて満員電車で通勤した昭和世代は郊外に自宅を構えており、そこで老後を過ごすためだ。単に高齢者が多くなるだけでなく、一人暮らしや外出に手助けを必要とする人も増える。

鉄道に乗る必要のない人が増える

東京都も大阪府も高齢者が激増する。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によれば2040年には東京都の高齢化率が29.0%、大阪府では34.7%に達する。交通の便の悪い地区に住む高齢者は自宅周辺で過ごすことが多くなりがちだが、東京都市圏交通計画協議会の資料によれば、プライベートの用事をマイカーで済ませる65~74歳は、2008年と2018年の比較で1.26倍、75歳以上では1.5倍に増えている。社会が高齢化するに伴い、大都市圏においても毎日鉄道に乗る必要のない人は確実に増えていくだろう。

加えて、テレワークが普及してきており、勤労世代にも衛星都市で一日の大半を過ごす人が多くなっている。衛星都市の役割が「ベッドタウン」から「仕事も趣味も生活も楽しむ街」へと大きく変わりつつある。

これまでは通勤・通学客にとって、「利便性」というものが大都市圏の鉄道会社への大きな評価基準であったが、今後は「地域内の移動手段」としてのニーズも大きくなる。

「住みやすい街」づくりに主体的に参加する鉄道会社が評価されることとなるだろう。

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