女性目線がポイント?東京オフィスに新潮流 小型高級オフィスビルが増殖しているワケ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
画像を拡大
「PMO八丁堀」のエントランスホール

ただ、単に高級感を強調しても顧客となる企業には響かない。阿迦井課長は、小型オフィスビルの展開には「必勝パターンがある」と明かす。

1つめが、女性目線でのデザイン・設計を重視することだ。上場を目指している企業の場合、内覧の際に経営トップが女性秘書を連れてくる割合が高い。あるいは、移転先を探している総務担当者が、連れてきた部下の女性に意見を求めるケースが増えている。

こうした状況に対応するため、たとえばストッキングを履き替える際に便利なフィッティングボードを女性トイレの個室に設置するなど、「女性からの評価が高くなるような工夫をしている」(阿迦井課長)という。

2つめは、展開するエリアを限定すること。野村不動産はPMOシリーズを中央区や千代田区、港区に集中させている。高スペックの大規模ビルが林立するエリアに開業することで、地域イメージと重ねてPMOのブランドイメージを高める戦略だ。

これらの戦略が奏功し、PMOシリーズは賃料を他社物件よりも10~30%高めに設定できている。野村不動産は同シリーズを現在の17棟から2017年度に28棟まで増やしていく計画だ。

業界4~5番手の「差別化戦略」

小型オフィスビルが人気を集める背景には、入居企業側のニーズの変化がある。従来のように業務効率化を最重視するのではなく、採用の際に学生のウケがいいことや社員のモチベーション向上につながるなど“波及効果“を考慮して、中小企業や成長期に入ったベンチャーが、高級感のある小型のオフィスビルを選ぶケースが増加している。

CBREの厚井克夫シニアコンサルタントは「景況感の改善に伴い、規模は小さくても、賃料の支払い能力がある企業が増えている。小型といえども競争力の高い物件は、当面需要があるだろう」と見通す。

大企業を中心に、大型オフィスへの移転需要が依然旺盛なことも確かだが、業界4~5番手である東急不動産や野村不動産は、大型ビルの展開において三井不動産や三菱地所などに比べて競争力で劣る。そうした中で、新コンセプトの小型オフィスビルによる「差別化戦略」を打ち出す意味は大きい。

ここに来て、中堅デベロッパーまでもが小型オフィスビルの開発を強化している。はたして、新しい潮流を捉えた不動産会社が業界の勢力図を変えていくのだろうか。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事