「二子玉川マダム」が朝7時にスタバに行く理由 東急沿線に40年住んでわかった「街の魅力」の鍵

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田園調布には田園調布雙葉学園という幼稚園から高校までのお嬢様学校があって、最寄り駅は田園調布か九品仏なのだけど、下校時刻には旗を持って子供たちを誘導する母親たちが通学路の要所要所に立っている。「シャネルのスーツにフェラガモの靴」なんていわれたりもしたけど、それはオーバーとしても、みなさん高価そうな服を着ていらっしゃいます。

奥沢に引っ越してからは頻度が減ったものの、ときどき二子玉川へ行く。渋谷よりも頻度は高い。なぜ渋谷より二子玉川に行くのか。やっぱり渋谷は人が多すぎるし、若い人が多いのでなんだか落ち着かない。

出かけるなら二子玉川へ

あれはまだ90年代だったと思うけれども、渋谷ロフトの幹部に取材したことがあった。

そのとき彼が渋谷の街の問題点として「過度のヤング化」と話していたのが印象的だった。その少し前にセンター街にチーマーが増えて、トラブルが続発しているというニュースもあった。ガングロのコギャルたちが闊歩していた。「若者の街」というといいイメージがあるが、実業界の大人たちからすると必ずしもそうではないのだなと感じた。

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「過度のヤング化」の問題点は2つあり、1つはチーマー同士のトラブルやチーマーと一般人とのトラブル。センター街でチーマーがサラリーマンとおぼしきスーツ姿の男性に土下座させていた、という話も聞いた。

もっとも、不良少年によるカツアゲなんていうのは昔から全国どこでも盛り場ならありふれた話で、渋谷だけの話じゃない。ただ、渋谷のコギャルやチーマーがメディアで注目され、それによってさらに若者たちが集まった。

「過度のヤング化」の問題点2つめは、渋谷を訪れる人が使うお金が減っていることだった。それはそうだ、若者たちはお金なんて持っていないもの。お金を使う人が来るのは歓迎するけど、使わない人は来ないでほしい、というのが実業界の大人たちの本音だ。かくして2000年代の渋谷は街をどう大人化するかが隠れた課題だったのだと思う。

たしかにひところよりセンター街の若者は減ったように思う。とはいえやはりほかの街に比べて若者が多い。だからぼくも無意識に、出かけるなら二子玉川へ、となってしまう。

永江 朗 ライター・著作家

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1958年生まれ。「哲学からアダルトビデオまで」を標榜するライター・著作家。日本文芸家協会理事。出版流通論、近代出版文化史に詳しい。

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