全国の「道の駅」は"防災拠点"になるか

立地や制度面でさまざまな課題も

水道が復旧すると、温泉施設を再開。こちらは無料開放すると、われ先にと殺到する被災者同士で大げんかになり、3日目から有料に切り替えた。通常は1日平均500人程度の利用者が、1500人以上に膨れ上がったため、ボイラーが故障。駅を運営する株式会社が5000万円の修理費を負担することになった。

太田駅長は「災害時の補助金などの取り決めがなかったため、震災後に市と防災協定を結んだ。期待にこたえなければと必死で対応したが、事前によく話し合っておかなければあとで困る」と実感を込めて振り返った。

整備は進んでいるがソフト、ハードに課題

国土交通省によれば、1993年の制度創設当初、道の駅に「防災」の視点はなかった。しかし、山間部で起きた2004年の新潟県中越地震で、多くの被災者が道の駅に駆け込むなど、さまざまな災害を通じて各駅が仮設トイレや備蓄倉庫などを取り入れ始めた。

東日本では、青森から福島の東北4県の18駅で宿泊や食料提供、炊き出しなどの救援活動が行われた。自衛隊の前線基地として使われたり、道路情報をはじめ各種の被災情報が発信されたりした例も。道路管理者としてトイレや情報提供施設を整備する国も、その役割の大きさを再認識するようになった。

現在、全国1040駅のうち、何らかの防災設備を整備しているのは631駅。特に東北や中部、四国など災害への切迫感のある地域での整備率が高いという。

道の駅の“業界紙”である「道21世紀新聞・ルートプレス」のアンケートによれば、利用者は防災拠点化に大きな期待を寄せ、駅側もその担い手として意識する姿が浮かび上がる。

しかし、「川のすぐそばにある」「ハザードマップに入っていて避難所の役割が果たせない」など立地上の制約や、「行政との協定がなく、災害発生時の駅長の権限や経費の受け持ち先が決まっていない」などの制度上の不備を指摘する声も。アンケートを実施した2012年の時点で、行政との防災協定や覚書があるのは23.5%にとどまっていた。

また、電気や水などのインフラが停止した際に活用できる自家発電装置を備えているのは約17%、耐震性トイレや簡易トイレなどがあるのは1割に満たず、現実には「上品の郷」のような修羅場が繰り返されることが予想される。

アンケート結果を分析した京都大学大学院工学研究科博士課程の田中皓介さんは「防災拠点としてポテンシャルは高いが、立地や制度面で課題は多い」と指摘する。これから道の駅に立ち寄るときには、少し違った視点からも見ていく必要がありそうだ。

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