唖然!戦時下のヨルダンで原発建設計画 国連防災世界会議で浮かび上がる危機

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同じフランス・リモージュ大学名誉教授のミシェル・プリエール氏は「原発事故に対する国際法が十分に整備されていない。国際条約では情報を機密にすることが重要だとうたわれているが、本当は情報が公開されるべきだ。市民が健康に関する情報にアクセスし、長期的な避難に対しても人権が配慮されなければならない」と指摘した。

ヨルダンでも3基目の原発を新設へ

ヨルダンのNPO「エネルギー節約と持続可能な環境社会」代表のアイユーブ・アブダイエー氏は「ヨルダンでは3基目の原発が新設されようとしている。『核のヤクザ』たちが原子力の重要性を説きながら武器をつくる。IS(イスラム国)などがこれだけ戦争を引き起こしている中東で、絶対に原発を造らせてはいけない」と訴えた。

海外の専門家らに向けて福島の現状を訴える参加者

国連防災世界会議は国連加盟193カ国の首脳級や代表者らが参加し、18日までの予定で開かれる。本体会議では10年前の神戸で採択された「兵庫行動枠組」を引き継ぎ、東日本大の教訓を取り入れた新枠組が議論される。

だが、日本政府の原発再稼働の動きもあり、原子力防災についての議論は消極的な様子だ。「原発の存在そのものが人権への脅威である」などとする提言を本体会議で取り上げるよう求めているというプリエール氏は、「国連の会議の中で原子力が触れられないのなら、これはスキャンダルだ」とまで言って牽制した。

会期中に350以上の開催が予定されている市民主体のパブリックフォーラムでも、原発関連のテーマは数少ない。福島から来た参加者の1人は「フクシマが終わったことにされてしまう気がする」と危機感をあらわにしていた。

関口 威人 ジャーナリスト

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せきぐち たけと / Taketo Sekiguchi

中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で環境、防災、科学技術などの諸問題を追い掛けるジャーナリスト。1973年横浜市生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科修了。

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