野宿で死ぬ子も…欧州「難民大量流入」悲惨な現状 難民受け入れ国「優等生」のドイツですら悲鳴
それでも、ヨーロッパが難民の自動認定を止めた2015年以降、受け入れ体制を改善する時間は十分にあったという声は、難民支援団体だけでなく公務員からも上がるようになっている。
「これは突然襲ってきた危機ではない」。ベルギーの難民申請者受入連邦政府機関(Fedasil)のリース・ギリス報道官は「私たちは長いこと、このことについて政府に警告してきた」と指摘する。
シリア難民を100万人近く受け入れてきたと自負するドイツは、同様の数のウクライナ難民に加え、ほかからの難民が約8万人流入する状況に圧倒されている。2015年ですら目にしなかった難民の数になっていると警鐘を鳴らす自治体もある。
公営住宅は逼迫。借り上げられたホテルやホステルも満室となり、今では見本市会場の改装や巨大なコンテナキャンプの拡張が進む。
今ではウクライナ難民も憎悪の対象に
ドイツの指導者には、経済苦の中で難民危機が日常生活に一段と濃い影を落とすほど、極右に長く利用されてきた「反移民感情」が強まると懸念する向きもある。一時は歓迎されていたウクライナ難民でさえ、今では敵意を向けられる存在だ。
最近では、難民受け入れの準備が進められていたドレスデン近くの古いホテルが放火され、一部が焼ける事件があった。10月には、ウクライナ人を収容するドイツ国内のホステルが放火されている。いずれも、けが人は出なかった。
新たな難民の圧倒的多数はウクライナ人であるにもかかわらず、一部の政治家は、シリア、アフガンなどヨーロッパの外から来た難民が制度の重荷になっていると非難する。
オーストリアではチロル州当局がザンクト・ゲオルゲンの町に収容テントの設営を始めると、極右の指導者が地元住民に加わって抗議活動を行った。オーストリアは現在、チェコ共和国に倣って、多くの難民が越境を試みるスロバキアとの国境を封鎖している。
こうした流れを受けて、ナンシー・フェーザー内相など一部のドイツ当局者は、ヨーロッパによる国境管理の強化を求める声に加わるようになっている。