2015年の調査研究では就職に関しても調べている。専門学校進学者159名に対する調査ではあるが、4年制大学進学者と比べて実家所在地からの移動が少なく、3人に2人は出身都道府県にある学校に通っていることがわかった。また就職では、学校が所在する都道府県内に就職する率が7割で地元定着率が高い特徴も見られた。
調査対象者の中に含まれる都・府の居住者の割合が不明のため断定はできないが、地元での就職が多いことから、中小企業への就職者が多いと推測できる。この点は、早くは塚原氏の先掲論文でも指摘されていた。
賃金格差は進路格差が生む
日本では大企業の所在地は東京、大阪など大都市であることが通例だ。東日本大震災や新型コロナウイルスの影響で本社を地方に移す企業が話題になったこともあるが、それも新興企業がほとんどで、動き自体も拡大していない。
中小企業で働く率の高さは、現在の日本の労働環境としては決して有利なものではない。
最近のニュースでも、大企業は過去最高益、過去最高の内部留保を積む一方、下請けである中小企業は円安による原材料のコスト高分を製品価格に上乗せすることも認められず、経営に苦労する厳しい現実がしばしば報道されている。
賃金面で見ても、大企業と中小企業の賃金格差は大きく、それは都道府県ごとの平均収入額の差にも直結している。
また、地方再生の試みは数多く行われているものの、恒常的な成功を収めている地方は非常に少数だ。「地方には働く場がない」という言葉を聞くが、費用を使って専門学校で多様な分野を学んでも、介護や医療以外の仕事を探せないという現実は歴然と存在している。
上述の専門学校卒業生の就職の特徴からは、専門学校出身者は、就職できたとしても最初から不利な条件を含んだ就職となっていることが残念ながら認められる。
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