「夢追い型の専門学校」から見える進路格差の悲惨 データで見る「夢」は就職に結びつかない現実

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日本学生支援機構の奨学金を利用しての進学者が多い現状がある。専門学校での学修が安定した職業生活を可能にしないのであれば、卒業時に多額の借金を背負っている学生は、その後の生活設計が非常に不利になる。

昨今、奨学金が返済できず窮地に立つ、あるいは自己破産に追い込まれる若者の存在が話題になっているが、そこには専門学校を出た若者も多数含まれる。専門性が活かせる職でなければ、大卒より低い賃金形態となる専門学校卒業生のほうが奨学金の返済には厳しい状況になるのだ。 

どの専門学校も、「好き」や「得意」を仕事にする、「夢」を将来に活かす等と高校生に向けて謳い、就職に強いという一般的なイメージを前面に打ち出してアピールする。本当に「好き」や「夢」を将来の職業や経済的自立に結びつける役割を果たしているのか、専門学校側に自問を促したいところである。

多くが地元の中小企業に就職する

さらに、専門学校進学が将来の生活の安定につながるのか、考えてみたい。

文部科学省が専門学校の今後の方向性を決めるにあたり、大きな影響を持ったと思われる調査がある。同省の委託を受けて、東京大学が2013年に実施した「高等教育機関への進学時の家計負担に関する調査研究」と、株式会社リベルタス・コンサルティングが2015年に発表した「専修学校生の学生生活等に関する調査研究」である。

この当時、経済的理由で高等教育機関を中退する者、奨学金返済が滞る者の増加が社会問題となり、それに対する対策を講じるために同省が委託したものと考えられる。

どちらの調査も高等教育専門家のみが委員に選ばれ、送り出す側の高校や受け入れる側の専門学校の教職員が委員となっていないことに疑問を感じるものの、家計やアルバイト、進路選択の動機等詳細の質問が行われているため、貴重な調査研究と言える。

これらの調査研究で、両親の年収が低いほど専門学校への進学割合が高まっている点が指摘されている。これは、現在、学力の高い高校ほど授業料減免率が低い、つまり、家計収入が高いこと、さらに学力が低い高校では専門学校への進学が多いことを別の面から証明することになろう。

同じ傾向は、2021年12月に発表された国立教育政策研究所高等教育研究部の「高校生の高等教育進学動向に関する調査研究」第1次報告書でも言及されている。

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