アメリカ株が波乱の中でも年内は上昇と読む理由 市場は「金利騒ぎ」から徐々に脱却の方向へ

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それでも、「市場の金利騒ぎは解消する方向のようだ」と書いたのは、その傾向が例えば先週末4日の市場の動きなどに表れているからだ。この日に発表された10月分の雇用統計は、非農業部門雇用者数の前月比について9月分が26.3万人増から31.5万人増に上方修正されたうえ、10月分も26.1万人増と強い内容だった。

一方で、失業率は9月の3.5%から10月は3.7%に上昇(悪化)し、弱い内容となった。こうした強弱入り混じったデータから、結局、10年国債利回りは4.1%台で推移し、大きくは上昇も低下もせず、高位横ばいだった。

つまり、金利面から株価支援材料がなかったわけだが、NYダウやナスダック総合指数などの主要な株価指数は、前日比で1.3%前後の上昇を遂げている(なお、やや話がそれるが、興味深いのは、4日はアメリカの長短金利が低下していないにもかかわらず、ドルが対円のみならず、対主要通貨で独歩安となったことだ。これも世界市場の潮目の変化を感じさせる)。

10月後半のアメリカの株式市場も上昇色が鮮明となった。この局面でも金利水準には大きな低下が見られなかったが、「7~9月期の決算内容と企業側の先行きの収益見通しなどが、想定していたよりは堅調だった」として、金利を脇に置いて業績面から株価が押し上がったという感が強かった。こうした市場動向からは、長短金利のちょっとした上下動に一喜一憂する騒ぎは終わりつつあると判断できるわけだ。

来年は「いったん株価が大きく下落」との見方は不変

こうして、「前門の虎」「後門の狼」という例えで言えば、前門の「逆金融熊」(金利上昇を懸念した株価下落)はほぼ終焉し、アメリカ株は年内にいったん上昇しそうだ。それは日本株など、ほかの主要国の株式市場においても、株価を押し上げる方向で働こう。

しかし、金利「騒ぎ」は終わっても、実際のアメリカの政策金利はまだ引き上げられる。確かに利上げ幅は今後抑えられそうだが、CPIなどの物価指標には遅行性があり、そうしたデータで測ったインフレ率が顕著に低下するには時間がかかるだろう。すでに政策金利は中立金利(景気を温めも冷やしもしない金利水準)とされる2.5%を9月利上げ時から大きく超えてきており、金利高による景気抑制効果が徐々に累積されてくると考えられる。

すでに住宅関連(住宅着工や新築・中古住宅販売など)といった金利敏感セクターには、顕著に悪化の動きが出ている。個人消費の堅調さなどにより、アメリカの景気全般が後退期入りするのはすぐではないが、来年にはマクロ経済と企業業績の悪化が明確化し、後門の「逆業績熊」(業績悪化を懸念した株価下落)が表れると懸念している。

すると、これから年末までの株価上昇は、前門と後門の熊の狭間の「中間反騰」だと位置づけられる。10月半ばまでのアメリカの株価下落が多くの投資家の心理を傷つけたため、筆者が「すでに株価は底入れ上昇に向かっている」と解説しても、それを疑う向きは多いだろう。

同様に、年末に筆者の見通しどおりに株価がかなり上がると、株価が上がること自体が、さまざまな理由をこじつけて株価上昇を正当化しようという「にわか強気派」を増やして、今年末の株高から来年央にかけて株価が下落するという筆者の見解は、その時点では信じがたいように見えるかもしれない。

つまり、株価弱気論が盛んな現状は株価の底値圏であって、年末辺りにおそらく株価強気論が盛んな頃は株価の天井圏だろう、という見解だ。

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