スマホ決済事業は、なぜ儲からないのか 米スクエアは徐々に融資事業へシフト
たとえば、顧客が単に自分の名前を言うだけで買い物の支払いができる「スクエア・ウォレット」などだ。「スクエア・マーケット」は、オンライン上に簡単に店舗を開くためのサービスだった。
こうした展開は、スクエアの共同創設者でCEOであるジャック・ドーシーが推進してきたものだったが、上手くはいかなかった。同社の事業計画をよく知る人によると、ウォレットやマーケットのような事業はすでに棚上げされているという。
「ウォレットの展開からわかるのは、それほど支払いで困っている消費者はいないということだ」と、スクエアのCFO(最高財務責任者)サラ・フレイアーは言う。
スクエアが60億ドルもの企業評価額に見合うようになるうえでは、大量の取り引きデータを利用することこそが最善の方法かもしれない。識者によると、同社の決済事業には問題が山積みであるという。マージンが少なすぎる、新規顧客の獲得におカネがかかり過ぎるなどの問題だ。
加えて、ペイパルやファースト・データ、アマゾンなどとの競争もある。これらすべての企業には、独自のクレジットカードリーダーとそれに関連するサービスがある。
POS端末メーカー大手のベリフォンは、以前スクエアと同様のカードリーダーを提供していたが、その事業からは撤退した。同社のCEOは撤退直前に、小規模事業者向けの決済サービスは「利益が出るビジネスではない」と語った。
利益をあげるには利用者が大勢必要
小規模事業者にサービスを提供する大企業の多くが同じように感じていると、調査会社のIDCで国際決済の調査ディレクターを務めるジェームズ・ウェスターは語る。「それを成功させるには、決済サービスを利用する事業者が大勢必要で、また決済事業を離陸させるためには多額の資金が必要だ」。
スクエアは資金面に関しては対応済みだ。これまでに、ベンチャーキャピタルから5億ドル以上の出資を得た。利用者の確保に関しても、一定の成功は収めている。
スクエアによると、同社は小規模から中規模の「数百万社」にサービスを提供しており、2014年に処理したクレジットカードの支払金額は300億ドル以上だという。(同社は1回の取り引きで2.7%から3%の手数料を受け取るが、それをクレジットカード会社やほかの金融機関とわけ合わなければならない)。
それでも、企業評価額に見合うためにはもっと多くの顧客が必要で、今後も積極的に顧客基盤を開拓していく必要があるだろう。