消費者の本音聞く「ソーシャルリスニング」の効用 SNS会員が投稿する意見や会話を収集して分析

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優良顧客にSNSのフォロワーになってもらうと、企業のマーケティング活動において、極めて有益な情報が手に入ります。手に入れた情報は、たとえば次のような目的に活用することができます。

1. 顧客との関係をマネジメントする

優良顧客がその生涯を通じて企業にもたらす価値のことをLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)と言い、LTVを最大化することが企業の最重要課題だと言えます。LTVに注目が集まっているのは、新規顧客を獲得するコストが、既存顧客を維持するコストの約5倍と言われているためです。言い換えれば、既存顧客を維持することに重きを置けば、企業は利益を確保しやすくなるとも言えます。

SNSでは、どんなコンテンツが既存顧客、とりわけ優良顧客に支持されているかを把握できるのです。

2.新たな潜在顧客を獲得する

SNSから得られた情報は、既存顧客の維持だけではなく、新たに潜在顧客を獲得する際にも有用です。

たとえば、40代の女性向けに化粧品をプロモーションする際、インターネット広告などを使って40代の女性にターゲットを絞って広告を出したとします。そしてSNSにも同様にコンテンツを掲載したところ、優良顧客が「化粧品の主成分がオーガニックである」ことに関心が高いと分かりました。この情報は、今後の広告やSNSのコンテンツ内容に反映できます。新たな潜在顧客の開拓に繋がれば、プロモーションの新たな軸を獲得したことと等しいのです。

優良顧客から得た情報を、顧客との関係のマネジメントや新たな潜在顧客獲得に活用する例を以下の図に示します。

ソーシャルリスニングで「生の意見」を吸い上げる

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SNSの普及とともに、アンケート調査とは別に、SNS会員が投稿する意見や会話などを収集・分析して自社ビジネスに活かす「ソーシャルリスニング」を行う企業が増えています。

アンケート調査は設問があらかじめ決められているのに対し、ソーシャルリスニングは自発的で自然な意見・会話を対象とするので、一般消費者の本音を吸い上げやすいという特徴があります。

アンケート会社が抱える「アンケート慣れした会員(パネル)の回答」と比較して、ユーザーからの偏りのない生々しい声が聞けることも、ソーシャルリスニングを実施する企業が増えていることの理由でしょう。

ソーシャルリスニングを行う際には、何に主眼を置くかを明確にします。一般的には次の2点になるでしょう。

1.現状の把握

企業の商品・サービスのマーケティング活動が上手くいっているかどうか、現在の状況を把握するために実施します。

2.将来の予測

今後のトレンドを予測するために実施します。

SNSの特徴である「今話題になっていることが分かる」即時性と、「本音が分かる」真実性は、企業のマーケティング活動に欠かせない情報源になるはずです。つまり、アンケートなどでは知ることが難しい、社会の空気感や微妙な感情の移り変わりなどを把握できるのです。

広瀬 安彦 野村総合研究所 エキスパート研究員

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1972年、三重県四日市市生まれ。慶応義塾大学文学部卒、青山学院大学社会情報学研究科にて博士前期課程、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院にて博士後期課程を修了。大手印刷会社を経て2001年に野村総合研究所に入社。専門はインターネットによる広報戦略、データサイエンティストの育成、M-GTA(Modified GroundedTheory Approach)を用いた質的研究。明星大学経営学部非常勤講師、日本生産性本部 経営アカデミー講師。「NRIデータサイエンスラボ公式YouTubeチャンネル」で情報を発信中。

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