首相が42歳の英国に程遠い「おじさん日本」の絶望 「人生100年時代」を言い訳にせず世代交代を

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党内から「人生100年時代に、杓子定規に内規を当てはめることは適切とは言えない」との発言があったようですが、これがおじさんの本音で、決して、自ら退こうとはしません。各党がポストオフ(ここでは定年)制度を厳格運用しなければ、社会全体の高齢化とともに、議員の高齢化が益々進んでしまいます。

もっとも、各党の対応が不充分でも、日本は議会民主制の国ですので、我々国民が危機意識を持つことで状況を変えられることを忘れてはなりません。

一方、次世代を担う若手・中堅人材にも課題があります。日本では初等教育から「先生や親(上位者)の言うことを聞く子がよい子」との意識を植え付けられます。会社に入っても、「上司」の言うことを聞いていればよい、といった行動パターンになりがちです。

おじさん文化を助長する「従順な部下」

こうした「従順な部下」の存在が「おじさん」文化を助長したとも言えます。先月、30歳前後を対象とした次世代リーダーシップ研修にアドバイザーとして参加しましたが、グループワークで、何かアドバイスをすると、次には、そのアドバイスをつぎはぎしたようなペーパーが出てきました。正に「従順」なのです。

ただし、この状況は、待ったなしで変えていく必要があります。30~40歳代で、社会のことも会社のことも、世の中の先端の動きも理解した次世代人材が、上のおじさんたちをどんどん突き上げていかなければなりません。

下から突き上げられることになれていないおじさんも多いので、感情的な反発を受けることもあるでしょうし、人事権をもったおじさんに意見することにはリスクも伴いますが、ひとつの会社にしがみつかなくてもよいくらいまで自己研鑽を積み重ねつつ、こうしたリスクにも果敢に立ち向かって行って欲しいと思います。

おじさんたちが、あらゆるレベルで決定権を握っている今の日本で、大きな変化を起こすことは、気の遠くなる程難しいですが、社会全体が明確な危機意識を持ち、「おじさん文化」の打破を促していく必要があります。そうでなければ、日本経済も持ちません。

筆者も含めたおじさんたち自身が、将来に対する責任ある行動として、過去にとらわれた自分たちの価値観を押しつけることなく、次世代に早めにバトンを渡すこと、そして、次世代人材がおじさん依存から脱却し、自らが将来を担うべく奮起することを大いに期待したいと思います。

武居 秀典 DIC インテリジェンス室長

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たけい・ひでのり / Takei Hidenori

一橋大学卒業。三菱商事で主に調査・分析業務に従事。調査部長や北京現地法人社長を歴任。ロンドン、NY、北京などに計14年間駐在。2023年大手化学メーカーDICに移籍。

 

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