人気歌手や子ども標的「ミャンマー軍空爆」の実態 残虐行為繰り返されても始まらない本格制裁
救助にあたった人々によると負傷者の一部は、地域の重要な橋を支配している軍部がパカン地区にある病院への搬送を許さなかったため死亡した。「何人かが失血で死亡した」と、救助隊員の1人は言った。
空爆翌日に撮影され、ソーシャルメディアで拡散し、救助隊員によって本物であることが確認された動画には、木材やオートバイの残骸が広範囲に広がっている様子が映っている。ニューヨーク・タイムズが閲覧し、救助隊員が本物だと認めた写真からは、地面に敷かれたビニールシートに犠牲者数十人の遺体が並べられているのが確認できた。
KIOの軍事部門であるカチン独立軍(KIA)の少佐を含む複数の将校も犠牲者に含まれると、KIAの報道官も兼ねるナウ・ブー大佐は述べた。
「フェイクニュース」としらを切る国軍
25日に発表した声明で軍事政権は、爆撃の対象はコンサート会場ではなくKIAの基地であり、ジュネーヴ4条約に由来する交戦規則を満たしていると主張。出演者を含む民間人の死亡について広がっている報道は「うわさに基づくフェイクニュース、偽ニュース、こじつけのニュース」であるとした。
軍事政権は爆撃を正当化する理由として、KIAと人民防衛軍の連合部隊による最近の攻撃(警察に対する多数の攻撃や11回を超える部隊の待ち伏せ攻撃など)を挙げた。
ミャンマー国軍は10年にわたり文民政府と権力を共有していたが、2021年2月1日にクーデターで政権を掌握。以降、反対派に対して残忍な弾圧を続けている。人権団体によると、これまでに少なくとも2388人の民間人が殺害され、約1万6000人が拘束された。
民主活動家の多くは、反政府武装勢力が支配する国内の僻地に逃れ、人民防衛軍に加入。「軍事政権に対する革命」と称する運動を展開している。国軍はこれに対し、反政府武装勢力のものと思われる野営地を戦闘機で爆撃する報復に出ている。
クーデター後の拘束を免れた民族指導者と選挙で選ばれた公職者で構成される影の政府、国民統一政府(NUG)によると、軍事政権は今回コンサート会場を空爆する前の段階で、すでに民間人に対し240回近い空爆を行い、200人以上を殺害している。