人気歌手や子ども標的「ミャンマー軍空爆」の実態 残虐行為繰り返されても始まらない本格制裁

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9月にはザガイン地方域の学校が攻撃され、子ども7人を含む14人が死亡したと統一政府は発表した(これらの数字について、ニューヨーク・タイムズが独自に裏を取れているわけではない)。

国民統一政府は「テロリストである軍部は空爆による新たな大量殺戮を意図的に行うため、大規模な公共コンサートを標的にした」とコメント。KIOは25日の声明で、23日の空爆への報復として、軍事政権に対する軍事活動を拡大すると述べた。

国軍と少数民族が争う資源利権

中国とインドに隣接するカチン州には、年間数十億ドルもの利益をもたらす翡翠(ひすい)鉱山があることがよく知られている。その翡翠ビジネスは無法地帯で行われ、鉱山では大規模な崩落事故がたびたび発生。ときには何百人という死者が出ることもある。翡翠の取引を大部分支配しているのは国軍とその関連企業だが、カチン族の反政府勢力も採掘業者から利益を得ている。

ミャンマーの豊富な天然資源をめぐる争いは、国軍と多くの民族集団との間で長年にわたり紛争の大きな原因となってきた。少数民族は独自の軍隊を結成し、軍事政権に抵抗している。

アムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権団体は、世界の指導者や東南アジア諸国連合(ASEAN)に緊急行動をとるよう呼びかけた。ASEANは11月に首脳会議を開く予定だが、ミャンマーのクーデターとそれに続く弾圧に対して、これまでのところほとんど何の行動も起こしていない。

「軍事政権は1年半以上にわたって、軍政に反対する何百万人という人々に対して重大な虐待を行ってきた」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア部長、エレイン・ピアソン氏は語る。「世界中の政府がこの軍事政権の行動に影響を与える措置の発動に動くまで、あとどれだけの死者を出さなければならないのだろう」。

(執筆:Richard C. Paddock記者)
(C)2022 The New York Times

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