大絶賛!野田氏「追悼演説」は"泥仕合"の分岐点? 国会は「国葬」と「旧統一教会」問題で対立
そこからは声のトーンを変え、衆院選圧勝で再登板を決めた安倍氏の皇居での親任式の控室での安倍氏の気配りと温かい言葉、2017年1月の通常国会召集日の夜、秘かに首相公邸に呼ばれ、天皇の生前退位の是非について話し合い「国論を二分することがないよう、立法府の総意を作るべきだ」と意見が一致した、との2人だけの秘話を披露。
そのうえで、憲政の神様と呼ばれる尾崎行雄の言葉「人生の本舞台は常に将来に向けて在り」を引用し、「再びこの議場で、あなたと火花散るような真剣勝負をしたかった。勝ちっぱなしはないでしょう」と悔しさも交えて故人に呼びかけた。
その一方で、野田氏は「あなたは、歴史の法廷に永遠に立ち続けなければならない運命(さだめ)。強烈な光もその先に伸びた影も……」と、抑制的な表現ながら安倍氏の業績への賛否にも言及してみせた。
野田氏は約25分間に及んだ演説を「議員各位に訴えます。政治家の握るマイクには、人々の暮らしや命がかかっています。真摯な言葉で議論を尽くし、民主主義をより健全で強靭なものへと育て上げていこうではありませんか」と締めくくり、議場でのほぼ全議員からの拍手は数分間続き、傍聴席の昭恵夫人も涙ぐんで頭を下げた。
首相経験者に対する国会での追悼演説は戦後9回目
演説に対し、野田氏が所属する立憲民主党の安住淳国対委員長は「野田元首相でないとできない重みと権威があった。首相経験者でなければ語れない追悼演説だった」と高く評価。与党・公明党の石井啓一幹事長も「すばらしい演説だった。とくに、首相を経験したものでなければわからない重圧、プレッシャーと闘いながら職にあたってきたことに対し、心から敬意を表する、非常に実感が込もった言葉だった」と称えた。
また、昭恵夫人は演説後、「野田先生にお願いしてよかった。主人も喜んでいるでしょう。原稿を仏壇に供えたい」と感謝の念を伝えたという。こうした一連の反応は、演説巧者で知られる野田氏の「練りに練った言葉」が多くの議員や国民の心に響いたことを立証していた。
そもそも首相経験者に対する国会での追悼演説は戦後9回目で、2000年の小渕恵三・元首相に対する社民党の村山富市・元首相以来、22年ぶり。岸田文雄首相を含む現職議員の首相経験者は5人にとどまり、今回のような形の追悼演説は「安倍氏のような突発事件でもないかぎり、もう実現しない」(自民長老)との見方が多い。
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