震災下での東京都内・在宅医療の現場--業務用車の燃料調達に苦慮、高齢者は困難に直面

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 その後、高瀬氏はマンションの8階で暮らす高齢者夫婦を訪問。83歳の夫を診察した。このマンションは築年数がたっており、3フロアに1つしかエレベータが止まらない。夫婦とも足腰が弱く、夫は認知症を持っている。

診療の途中で立ち寄った訪問看護ステーションの看護師によれば、「輸液(点滴栄養液)の確保が心配。在宅酸素療法で使用する酸素ボンベが足りないとの情報もある。停電になった場合、たんの吸引器や酸素濃縮装置などが作動しなくなる」という。同看護師は、「酸素濃縮装置は酸素ボンベに切り替えることで数時間、使用できる。輸液ポンプも充電式の電池を用いることで対応できる」としているが、長期にわたって厳しい状況が続く可能性もある。

また、同看護師によれば、「入院したほうがよさそうだが、本人の希望で自宅にとどまっている患者さんが多い。逆に病院も受け入れできないため、そのままになっている」という。また、家庭では電気式の浴室も多く、停電になった場合、入浴も困難を来す可能性がある。

こうした状況に直面しつつ、訪問診療に従事している高瀬院長は、「まさに戦時下。逆にこういう時こそ、在宅医療が真価を発揮する必要がある。本人や家族、医療および介護スタッフを含めた多職種協働での努力が求められている」と気を引き締める。
(岡田 広行 =東洋経済オンライン)

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