社会貢献支出比率トップは衣類防虫剤トップのエステー(13.37%)。経常利益11.5億円に対して1.5億円を支出する。経済産業省・文部科学省の合同プロジェクト「理科実験プロジェクト」に参画、理科カリキュラム作成やパイロット授業実施などで協力している。
知識啓蒙や寄付、奨学金などへの支出も
復興支援では、自社製品の家庭用放射線測定器「エアカウンター」での社会貢献が特徴的だ。正しい放射線の知識を小学校で啓蒙する以外に、国立高等専門学校や被災地の福島県大熊町・川内町への寄付も行う。
2位は無添加化粧品のファンケル(12.54%)。経常利益42.3億円に対して5.3億円を支出する。地元横浜で社会福祉法人への支援や水問題啓発プロジェクトなどを実施。さらに、子ども向けの野球教室「ファンケルキッズベースボールチャレンジ」を開催し、そこで集めた中古道具を世界の子どもたちへ寄付を行っている。13年度は国内6カ所、5654点の用具をガーナへ寄贈した。
被災地では、「美と健康のSave the東北プロジェクト」を従業員有志が社会貢献休暇制度等を利用し実施。13年度は39回行い、従業員205人が参加した。
3位は電器測定器の中堅メーカーHIOKI(10.77%)。経常利益13.1億円に対して1.4億円を支出する。「人間性の尊重」と「社会への貢献」という企業理念のもと、特に地域への活動に力を入れる。
地元出身の理工系大学進学者への毎月4万円の奨学金制度、会社周辺の小・中学校への楽器寄付、会社を開放し屋台を運営する「HIOKI祭り」の実施、「ふるさとの森づくり」、小学校1~2年生を対象としたスポーツクラブを運営し、社員がスタッフとして関わるなど地域との関係を深めている。
長野県上田市が本社の同社は仙台の東北営業所などを除き、被災地の拠点は少ない。しかし、被災地復興支援は売り上げの一部を2014年まで義援金として寄付を継続。可能な範囲での支援を行ってきた。
以下、4位ヤマトホールディングス(7.53%)、5位資生堂(7.27%)、6位森永製菓(6.91%)、7位ライオン(6.32%)、8位日本マクドナルドホールディングス(5.77%)と続く。このように利益の一定水準を社会貢献に使うというのはわかりやすい基準だ。これから社会貢献を行おうという企業はぜひ目安として使っていただきたい。
社会貢献支出額は復活の兆し
さて、3年間データが取れる636社の社会貢献支出額では、2011年度2227億円、2012年度1838億円、2013年度2121億円と支出額は復活の兆しを見せている。特に寄付金以外の支出が2011年度595億円、2012年度667億円、2013年度672億円と増加。事業としての取り組みや人の派遣などが増えていることが伺える。
悲惨な被害にあった東日本大震災の被災地復興は日本全体の大きな社会課題であることは間違いない。大きな力を持つ企業の積極的な支援への取り組みには大いに期待したい。
その一方で企業には他にも多くの面が求められているのも事実。株主はグローバルになり、サプライチェーンは大きく広がり、自社が関わるステークホルダーは国内だけでは収まらない。
特定の社会貢献活動を行うだけでは他のステークホルダーからの理解は得られない。株主への配当、非正規を含めた従業員の待遇向上、取引先との条件改善などを含め、限られた資金をどう配分するか方針を定め、実行していく必要があるだろう。
こうした取り組みがしっかりできている企業は支出額の多寡に関わらず幅広い層から「信頼される会社」として高く評価されるはずだ。
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